はじめに
現代社会では、多様なニーズを理解し、それに対応するための政策やサービスが求められます。社会福祉の観点においても、複合的かつ複雑な課題が人々や社会を取り巻いております。
ニード論として代表的なものの一つに、「ブラッドショーのニード論」があります。本記事では現代社会や社会福祉、社会政策などを学ぶ方に向けて、各ニードについて説明していきます。
ブラッドショーのニード論とは?
ジョナサン・リチャード・ブラッドショー(以下ブラッドショー)は、社会政策や貧困、児童福祉を専門とするのイギリスの学者になります。
ブラッドショーは、「ソーシャルニードの分類」において、ニーズを4つのカテゴリーに分類し、それぞれ異なる視点からニーズを評価・分析することを行いました。
それぞれのニーズは以下の4つになります。
1.規範的ニード(Normative Need)
2.感得されたニード(Felt Need)
3. 表明されたニード(Expressed Need)
4.比較によるニード(Comparative Need)
それぞれのニードについて具体的にみていきましょう。
規範的ニード
規範的ニードは、専門家や専門機関、行政官や社会科学者らによって定義されるニードになります。これらは特定の基準や標準に基づいて設定されます。
「望ましい基準」が存在し、実際の基準がその基準に達していなければ、そこにはニードがあるともいえます。
感得されたニード
感得されたニードは、主観的な要素が強く、人々がサービス等を必要としているかどうかで判断されるニードになります。
本人によって体感的に自覚されるニードになり、アンケートや聞き取りによって把握されるものになります。
表明されたニード
表明されたニードは、人々が必要であると表明することによって表れるニードになります。感得されたニードが、行動に変えられることで、表明されたニードとなります。
よって「感得されたニード → <行動> → 表明されたニード」という流れになります。
比較によるニード
比較によるニードは、サービスを利用している人と利用していない人を比較することによって決定されるニードになります。
そのため比較によるニードを明らかにするためには、同じ特性を持つ別の人や地域などを比較することが重要になります。
社会福祉士国家試験問題(第31回)より
ブラッドショーのニード論は社会福祉士の国家試験でも取り上げられているので紹介になります。
第31回問題105
ブラッドショウ(Bradshaw,J.)のニード類型論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 規範的ニードは、同じ特性を持つ別の人や地域などとの比較により明らかにされる。
2 規範的ニードは、「望ましい」基準との対比において、専門家や行政官などが存在を認めたニードを指す。
3 規範的ニードは、クライエントとの契約によってその内容が定まる。
4 比較ニードは、クライエントによって体感的に自覚される。
5 比較ニードは、その存在が社会的に認知されているニードを指す。
ブラッドショーのニード論を考えるときに「主観的」と「客観的」がまず第一のポイントになります。
ポイント
<主観的なニード>
「感得されたニード」と「表明されたニード」
<客観的なニード>
「比較によるニード」と「規範的ニード」
問題文をみていきます。
第31回問題105
ブラッドショウ(Bradshaw,J.)のニード類型論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 規範的ニードは、<客観的>
同じ特性を持つ別の人や地域などとの比較により明らかにされる。<客観的>
☆キーワードは「比較」 選択肢4の比較ニードを言っているのではと予測
2 規範的ニードは、<客観的>
「望ましい」基準との対比において、専門家や行政官などが存在を認めたニードを指す。<客観的>
☆キーワードは「基準」「専門家や行政官」
3 規範的ニードは、<客観的>
クライエントとの契約によってその内容が定まる。<?>
4 比較ニードは、<客観的>
クライエントによって体感的に自覚される。<主観的>
☆問題文が感得されたニード<主観的>
5 比較ニードは、その存在が社会的に認知されているニードを指す。
☆認知されている → 否定 → 認知されていない「潜在的ニード」
よって顕在的ニードのことを言っている
よって正解選択肢は2となります。
まとめ
ブラッドショーのニード論は、社会政策や公共サービスの分野で多様なニーズを理解し、適切に対応するために用いることができます。
またこのニードの分類は、ある課題が一つのニードに該当するとは限らず、複数のニードに該当することもあることをブラッドショーは述べているそうです。
現代社会において、多様なニーズに対応することがこれからますます重要になっていきます。
本記事をご覧になられた方が社会福祉においても「ニーズ」という視点を大切に持ち、今一度「一人のニーズ」、「一人ひとりのニーズ」に目を向けていただければ幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いします。