コラム

ハンセン病の歴史を次世代へ|忘れてはいけない人権問題

はじめに

皆さんは「ハンセン病」というものをご存じでしょうか?

私は恥ずかしながら30歳を過ぎてから、この「ハンセン病」というものを知りました。

福祉の国家試験には「ハンセン病」は出てこなかったので、合格してから職能団体に所属し、その存在を知りました。

私たちが「ソーシャルワークのグローバル定義」に基づいた実践を行うのであれば、また、「ソーシャルワーカー」を名称として名乗るのであれば、このハンセン病の歴史というものは「社会構造」、「偏見や差別」、「社会運動」などといった多くの要素が含まれており、いわば「教科書」でもあります。

私たちはハンセン病の歴史を学び、そこにあった社会の歴史を後世に届ける必要があるのではないでしょうか?

本記事はそのような想いのもと、簡潔にご紹介しております。良かったらどうぞご覧ください。


グローバル定義

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。

社会正義、人権、集団的責任、および多様性の尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。

ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。

この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。


ハンセン病とは

ハンセン病は「らい菌」という細菌によって引き起こされる感染症のことを言います。まだ治療法がなかった時代は、「皮膚の斑紋」や「体の一部が変形する」といった「外観的な特徴」があった病気になります。

この「外観的な特徴」により、本来「らい菌」はとてもうつりにくい感染症にも関わらず、偏見や差別の対象となり、最終的に「国の強制隔離政策」へと進んでいきます。

しかし療養所のはじまりは隔離というものではなく、むしろ「キリスト教」「仏教」の人たちが、差別や偏見を受け居場所をなくした人たちを「助けたい」という想いのもと、ハンセン病の療養所をつくったのです。


ハンセン病問題

〇中世~近世

・体の一部が変形する外観の特徴などから、「偏見や差別の対象」にされることがあった。


〇明治後期(1900年代~)

・ハンセン病患者隔離政策が行われる。ハンセン病と診断されると、強制的に療養所へ収容され、そこで一生を過ごすこととなる。

・昭和6年(1931年)には「癩(らい)予防法」が成立。療養所も増設され、各県では「無癩県運動」として、患者を見つけ出し療養所に送り込むということが施策として行われる。

・ハンセン病患者と分かると、保健所の職員が自宅を徹底的に消毒し、人里離れた療養所に連れていかれる光景が人々へ「ハンセン病は恐ろしい」というイメージを植え付け、差別や偏見を助長させる。


〇プロミン(治療薬)の登場

・「プロミン」という治療薬が戦後遅れて日本にも導入される。これによってらい菌の保菌率はほぼ消失され治療法として確立される。

・しかしプロミンによる治療法が確立したにもかかわらず、隔離政策は継続される。療養所にはプロミンによって「ハンセン病が完治された」にもかかわらず、「癩予防法」により継続して療養所から出ることはできない状況が続いた。


〇癩予防法の廃止(1996年,平成8年)

・平成の時代になりようやく癩予防法が廃止される。その後1998年(平成10年)に熊本地裁を皮切りに、癩予防法を違憲とする「違憲国家賠償請求訴訟」が行われる。2001年(平成13年)に熊本地裁で原告が勝訴し、違憲とする判決がされる。

・2002年(平成14年)に「国立ハンセン病療養所等退所者給付事業」を開始、国による療養所退所後の福祉増進や、啓発活動が行われる。


参考文献:ハンセン病の向こう側|厚生労働省


ハンセン病と語り部活動

多くの人たちの働きかけもありハンセン病に関する啓発活動は多岐に渡り、様々な手段で私たちは知ることや学ぶことができます。

代表的なものとして「国立ハンセン病資料館」という場所があります。

これは1993年(平成5年)にハンセン病患者・回復者が自ら生きた証を残し、社会に過ちがくりかえされないように訴えることを目的に設立されました。

その他にもハンセン病療養所を世界遺産に登録しようとする動きや、厚生労働省のホームページにはハンセン病に関する様々な情報が掲載されております。

国立ハンセン病資料館|https://www.nhdm.jp/

国立ハンセン病資料館キッズコーナー(小学校中学年~中学生向け)|https://www.nhdm.jp/kids/

ハンセン病療養所世界遺産登録推進協議会|https://www.hansen-wh.jp/

厚生労働省 ハンセン病に関する情報ページ|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/index.html


今はYOUTUBEの動画でも語り部活動等の講演を聴くことができます。

また映画監督で有名な宮崎駿監督も、もののけ姫の作品にハンセン病患者を登場させるなど、大きな影響を受けております。

佐川修さん講演|語り部活動
国立ハンセン病資料館作成
宮崎駿さん語るもののけ姫とハンセン病

日本におけるケガレ思想

皆さんは子どものころ、「呪い」といって人にタッチしたり、またされたりした経験はないでしょうか?

また知人が使ったコップを例え洗っていても使うことをためらう、そんな経験はないでしょうか?これは海外の人にはない日本特有の気質になります。

このように私たち日本人は、古くから「ケガレ思想」というものがあります。

ケガレ思想

けがれたものや人に直接触れたりすると、それが伝染されるといった観念

歴史を遡ると、こういった人や動物が死んだ際などに生じる「ケガレ」といった観念(不安感)を、「キヨメ」ることが必要とされ、実はそのキヨメに携わる人も差別の対象とされていたようです。

このように差別や偏見は、遥か歴史を遡るところに起源や根源といった源流が存在します。

私たちは「歴史から学ぶ」ことで現代の課題や問題への解決の糸口を知ることができるのです。


まとめ

以上がハンセン病についてご紹介の記事になります。

本記事を通じて、ハンセン病について関心を持つ人が一人でも増えることがありましたら幸いです。(SNSでシェア等歓迎)

私自身も、北海道にて国立ハンセン病資料館よりパネルをお借りして展示会を行うことに挑戦した経験もあります。

このように今は誰でも気持ちさえあれば、できることはたくさんあります。

私たちの共通のミッションである、人々や社会のWellBeing(ウェルビーイング)の増進を目指して、多くの方と共に歩んでいきたいと思いますので、今後とも引き続き宜しくお願いします。


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