はじめに
本記事では、対人援助を行っている社会福祉士や精神保健福祉士の方を対象に、精神分析理論で頻出な「イド」「自我」「超自我」について、わかりやすくまとめております。
精神分析理論の流れとしましては、心理的治療ということで「催眠法」からはじまり、その後フロイドらによって「自由連想法」や「夢の解釈」、「転移」などが方法として行われてきました。
ソーシャルワークの世界においても、精神分析理論といった心理学が導入されたことで発展された歴史があり、「イド」「自我」「超自我」や「防衛機制」「転移と逆転移」などの諸理論が一般的になっていきます。
これらの理論は「クライエントの心は決して安定はしていない」という考え方が基盤となっており、過去の経験の連続、そして無意識化にある精神的エネルギー(不安や抑うつ、怒りなど)が行動に表れているという点を重視しております。
日頃対人援助を行っている方々にとって、クライエントについての理解を深めるためにも精神分析理論ははじまりの章として必要不可欠な知識となります。
以下本記事や本サイトについて紹介になります。
どんな人を対象?
・「イド」「自我」「超自我」について学びたい。
・将来、社会福祉士や精神保健福祉士の職業に就きたい。
・精神分析理論を学び自身を成長させたい。
”社会福祉は一重にものの見方にあり”
ソーシャルワークの実践において、心理学や社会学といった知識は技術となり、実践者を支えてくれます。
それでは以下ご覧ください。
キーワードについて
まず最初にイド・自我・超自我について簡単にキーワードをまとめていきます。
イド
・快感原則に基づく
・生きるための基本的ニーズを満たす心
・本能的な衝動を表す心
・反射装置
自我
・現実原則に基づく
・思考や計算、記憶を使用し、社会的に適切な形で、イドのニーズを満たす実行者としての働き
・意識的な部分
超自我
・道徳的規準や社会的規範
・良心や価値観
※権威主義な環境で育った人は、支配的で抑圧的な超自我が築かれるなど、人それぞれ良心や価値観は異なる
このように、イド(無意識・本能的)、自我(意識・思考的)、超自我(道徳的)として、相互に関連し、パーソナリティが形成されます。
次はそれぞれのキーワードについて簡単に解説していきます。
イドについて
イド
・快感原則に基づく
・生きるための基本的ニーズを満たす心
・本能的な衝動を表す心
・反射装置
イドは、「人間が生きるために必要な基本的ニーズを満たす心」のことを表します。
それはまた、反射的で本能的であり、幼児的な性質をもつとのことです。
食べること、安全を守ること、生殖活動など、外的あるいは内的な刺激によって、ニーズを満たそうとエネルギーが放出されます。
このようにイドは、快感原則に基づく、無意識にあるエネルギーともいえます。
自我について
自我
・現実原則に基づく
・思考や計算、記憶を使用し、社会的に適切な形で、イドのニーズを満たす実行者としての働き
・意識的な部分
イドが「快感原則」に基づくことと反対、自我は「現実原則」に基づきます。
自我の役割は、イドのエネルギーを「社会的に受け入れられる形」で実行できるように調整することとが役割となります。
つまり、イドが「無意識」であるのに対して、自我は「意識的」であると言え、思考や計算、記憶を使用します。
このように、調整役として、イドに働きかけるものが自我になります。
超自我について
超自我
・道徳的規準や社会的規範
・良心や価値観
※権威主義な環境で育った人は、支配的で抑圧的な超自我が築かれるなど、人それぞれ良心や価値観は異なる
超自我は、道徳的規準や社会的規範といったものになります。
ただし気を付けなければならないことは、良心として抱くものは一人ひとり異なるということがあります。
上記の例にあるように、権威主義で支配的な価値観が良心として育まれた人は、超自我が社会的規範とは離れてしまうものが形成されることがあります。
このように、超自我は「価値観」という部分に近い概念になります。
プラスα
価値と知識と技術について
例)ナイフを例として
・ナイフの知識100、ナイフの技術100
・価値観A「人を傷つけるもの、身を守るもの」
・価値観B「おいしい料理を作るためのもの」
このように、知識や技術が100だとしても、価値観を何に置くかによって人の行動は変わる。
ゆえに、「価値」というものは何よりも大切であると言える。
以上が、イド・自我・超自我について簡単なまとめとなります。
国家試験~設問より
国家試験の設問でも出題されているので、例を挙げて確認します。
国家試験設問より
精神保健福祉士国家試験-第24回問14-1
精神分析療法では、無意識のエス(イド)の活動と、意識の自我(エゴ)の活動とが適切に関連するよう援助する。
こちらは内容が適切(正解)なものとなっております。
イドや自我は相互に関連して、バランスが保てるように援助をはたらきかけます。
まとめ
以上が「イド」「自我」「超自我」について簡単なまとめとなります。
このように「イド」「自我」「超自我」といった3つのパーソナリティの相互作用というものが存在し、それらのバランスが保たれていることで、人は精神的にも良好で健康な状態でいることができます。
これらの「イド」「自我」「超自我」といった無意識や意識にある部分は、スキーマ化することも多く、代表例として「氷山モデル」や「ハインリッヒの法則」があります。皆さんも一度は耳にされたり、実際にフレームワークとして活用されたこともあるのではないでしょうか。
精神分析理論や心理学の知識を持つことは、「心の時代」と言われている現代においてますます重要になっていきます。
以上が「イド・自我・超自我まとめ~精神分析理論の入口」の記事でした。
引き続きどうぞよろしくお願いします。
★本記事を書くにあたって参考にした書籍
・ソーシャルワーク理論入門 デビット・ハウ著 杉本敏夫監訳 (株)みらい 5精神分析理論
・自我と防衛 A・フロイト著 外林大作訳 誠信書房 1章自我の位置と役割 2章エス、自我、超自我は分析的にいに研究されるか