はじめに
本記事では、ソーシャルワーク史において重要な折衷論として登場したパールマンの「問題解決アプローチ」を取り上げます。キーワードとして、「4つのP」、「部分化の技法」、「ワーカビリティ」、さらに「社会福祉士国家試験」についても解説しています。ソーシャルワークや社会福祉を学ぶ方々にとって、有意義な内容となることでしょう。
パールマンという人物
まずはじめにパールマンという人物について以下ご紹介になります。
ヘレン・ハリス・パールマンは、1905年12月20日にミネソタ州セントポールで7人姉弟の長女として生まれました。彼女の両親は東ヨーロッパからセントポールに移住してきており、父親は工場長として働いていましたが、社会主義者や労働組合の労働者に対して同情的な方でした。ヘレンは1926年にミネソタ大学で英文学と教育の学士号を取得し、1934年にニューヨーク社会福祉学校で精神科ソーシャルワークの資格、1943年にはコロンビア大学の社会福祉学部で修士号を取得しています。
1935年にマックス・パールマンと結婚し、1942年に息子のジョナサン・ハリス・パールマンを授かります。当初、大学で英語を教えたいと考えていましたが、1920年代には女性やユダヤ人に対する学問の機会が限られていることに気づき課題意識を持ちました。そこで、シカゴで広告コピーライターの仕事を探していたところ、ユダヤ社会サービスのカウンセラーの仕事を見つけました。彼女は、作家としてのスキルを使って、人々の行動や感情を理解し、多くの人々を助けることを決心し、広告の仕事のオファーを断りソーシャルワークを続けたのです。
その後、彼女は家族サービス機関、学校、児童相談所、精神病院で18年間ソーシャルケースワーカーとして働きました。1938年から1945年までコロンビア大学で非常勤講師を務め、1945年にはシカゴ大学の助教授となり、退職するまで教鞭をとりました。また、カナダ、イギリス、ハワイ、香港、スコットランド、インド、プエルトリコでも教え、講義を行いました。
ヘレン・ハリス・パールマンは、1957年に『ソーシャル・ケースワーク:問題解決プロセス』を出版しました。このソーシャルワーク理論は「シカゴ学派」を発展させたもので、世界中のソーシャルワーク教育と実践に影響を与えたアプローチとなりました。英語版は約20万部以上を売り上げ、10カ国語に翻訳されております。
彼女は生涯で8冊の本を執筆し、11の外国語に翻訳されたほか、80以上の記事を発表しています。1989年の著書『The Dancing Clock』では、子供時代の思い出を題材にし、他の人々が自分の若い頃の出来事に対してどう反応し、それがどのように人生に影響を与えたかを探求する手助けをしました。
パールマンの業績は多岐にわたり、1920年代にミネソタ大学の英文学部から受けた最優秀劇作家賞や最優秀脚本賞から、1992年にソーシャルワーク教育評議会から授与された生涯功労賞まで、多くの栄誉を受けています。1996年にはシカゴ大学が彼女の90歳の誕生日を祝し、社会福祉管理学部に彼女の名前を冠した講座を設立しました。
また、彼女はソーシャルワークの専門家としてキャリアを通じて活躍し、Journal of American Orthopsychiatry and Social Workの編集委員会にも参加していました。パールマンは退職後も9年間、「20世紀文学におけるマイノリティの子供」や「ユートピアと人間の福祉」といった単一の大学院コースを教え続け、現代のソーシャルワーカーや思想家が過去のヒューマニストとつながる方法を模索しました。
問題解決アプローチの基本的概念
パールマンは「問題」の概念について、クライエント個人の問題にとどまらず、人間が生きるうえで必然的に抱えるものとして捉えました。
パールマンの姿勢は、人生を生き抜く過程で取り組むべき問題を最初に位置づけるもので、問題を抱えることがむしろ自然であるという観点から専門職に影響を与えました。
問題の概念
パールマンは、人間(person)は生まれてから死ぬまでたえず何らかの問題に取り組んでいく存在と捉え、問題解決過程それ自体をその人生で遭遇する問題を解決するためのツールと考えた。
したがって問題解決アプローチは、クライエントの問題を解決するための方法という次元からのスタートではなく、人間としてその人生(過程)を生き抜く中で取り組む問題を解決する方法、という次元からスタートしていく。
ソーシャルワークの実践モデル 心理社会的アプローチからナラティブまで 久保紘章・副田あけみ編著 川島書店 第3章問題解決アプローチ P33引用
このように、問題解決アプローチにおける「問題」とは、単にクライエントが抱える個別の課題ではなく、人が生きるうえで必然的に取り組むべきものとして、パールマンは捉えました。
ソーシャル・ケースワークの定義と4つのP
パールマンはソーシャル・ケースワークを以下のように定義しました。
ケースワークの定義
ソーシャル・ケースワークは、人びとが社会的に機能するあいだにおこる問題をより効果的に解決することを助けるために福祉機関によって用いられるある過程である。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P4引用 国立国会デジタルコレクションより
さらにパールマンは、この定義が仮にどれほど不完全であっても、ケースワークの「4つの基本的内容」が含まれていることが、その核心であると述べています。
この4つの基本的内容が、パールマンの有名な「4つのP」(※後に6つのP)につながります。
ケースワークの核心
ケースワークということの核心はこれである。ある問題をもてる人が、ある専門家がある過程によって彼を助ける場所にくる。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P4引用 国立国会デジタルコレクションより
このように「People(人)」「Problem(問題)」「Place(場所)」「Process(過程)」の4つのPを、パールマンは専門職の援助の骨子であり、独特の性格を持つものとして捉えました。
※後にProfession(専門家)とProvision(制度・政策・資源)が加わります。
People(人)
クライエントは他の人々と同じような面を持ちながらも、独自の特性を持っています。
年齢や文化によって共通点がある一方で、その人生経験や環境によって一人ひとりが異なる存在です。クライエントのパーソナリティは、生まれつきの素質や家族、種族、人種、そして個々の経験から形成されています。
そしてそれらは「生きた環境の中にいる」ことや「パーソナリティは絶えず変化や再構築が生じている」という相互作用の点から、クライエントの全てを知ることはできないとされております。
ソーシャルワーカーは、クライエントの全体像を完全に理解する必要はありませんが、彼らが直面する問題に効果的に対処できるようサポートすることが重要です。クライエントの行動の背後にある動機を理解し、その行動が持つ意味を探ることで、彼らの社会的適応を支援し、機能回復を助けることができます。
~中略
しかしながら、人は彼が生きているいかなる瞬間においても一個の全体(a whole)として存在する。
神経症的不安の問題にしても、収入不足の問題にしても、彼は肉体的、心理的、社会的な存在として作用する。
彼は、いわば、彼の素質、彼の身体的ならびに社会的環境、彼の過去の経験、現在の数々の近くと反応、そして未来への抱負をも包含するところの、過程にある所産(product-in-process)である。
彼が出あう一つひとつの生活情況(life-situation)に彼がもたらすものは、この身体的ー心理的ー社会的ー過去ー現在ー未来の形状(physical-psychological-social-past-present-future configuration)である。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P7~8引用 国立国会デジタルコレクションより
このようにクライエントは他の人と同じ部分を持ちながらも、独自の体験と特性を持っているため、ソーシャルワーカーはクライエントの個別性と行動の目的を理解し、適切な支援を提供することが求められます。
Problem(問題)
パールマンはソーシャル・ケースワーク領域の問題を以下のように述べております。
ソーシャル・ケースワークの問題
ソーシャル・ケースワークの領域の問題は、人の社会的機能によって敏感に影響し、影響をうける問題である
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P33引用 国立国会デジタルコレクションより
クライエントが抱える問題には、食や住居の欠乏、家族関係、医療や心理的サポート、仕事や生活の安定など、さまざまなニーズや葛藤が含まれています。また、こうした問題は、個人としての役割や社会的役割との間で生じる悩みやストレスを引き起こしやすく、ソーシャルワーカーはその対処と適切な支援を行います。
ソーシャルワーカーが行う支援の特徴は、クライエントが社会に適応し、安定した生活を送るために必要なサポートを提供することです。
クライエントの抱える問題は、個人的な感情や欲求と、社会的・文化的な期待や関係の間で起こる葛藤から生じることが多く、ソーシャルワーカーにはその問題を理解し、的確に対応する力が求められます。また、クライエントが心理的な問題に対しても向き合えるように、時には医療や心理治療の専門機関と連携しながら支援を行います。
さらに、ケースワークにおいては、全体的な理解を基にしつつ、特定の課題に焦点をあて、段階的に取り組むアプローチが重視されます。ソーシャルワーカーは、クライエントが抱える多面的な問題を整理し、優先順位をつけて進めることで、具体的な解決を目指します。
このように、クライエントが抱える問題を細かく観察し、適切な支援を行うことが重要です。
Place(場所)
社会福祉に関する機関や施設は、問題を抱えて援助を求める人々を支える場所として機能しています。これらの場所では、物質的援助、状況の変化を促す支援、相談、心理的援助など、さまざまなサービスが提供されています。そのため、個々のケースに基づいて援助を行うことから、これらの施設はソーシャル・ケースワーク施設と呼ばれています。
※現代は施設のみならず多様な機関が存在しますが、当時の文章のまま以下引用になります。
ソーシャル・ケースワーク施設
人が彼の問題を持って援助を求めて来る時は、社会施設として知られている。このような施設が個別のケースについて物質的援助、情況の変化、相談、心理的援助、あるいはそれらの何れかのものを合わせたサービスを個々のケースに基づいて与えるとき、その仕事の方法からその名称をとって、それはソーシャル・ケースワーク施設と呼ばれる。
ソーシャル・ケースワークの施設は、その方式にそれぞれ差異があるが、その分野を決める三要素がある。施設を維持するもののよりどころ、施設の専門職の権威のよりどころ、施設の独自な機能および関係する分野、である。個々の施設はそれらの要素をあわせてなりたっており、そしてそれらの諸要素の独自な結合状態がその施設のサービスとケースワーク援助の焦点、範囲、条件を左右するのである。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P49引用 国立国会デジタルコレクションより
ソーシャル・ケースワーク施設は維持される方法や専門家の配置、施設の役割によって分類されます。施設の維持は、税金や寄付によって支えられており、税金で維持される施設は「公的」施設と呼ばれ、児童福祉や心身の保護などのサービスを提供します。一方、寄付で運営される施設は「私的」施設とされ、同様のサービスを提供します。公私を問わず、施設の政策や手続き、資金調達方法は施設の種類によって異なります。
ケースワーク施設には「専門職権威のよりどころ」により第一次的社会福祉施設と第二次的社会福祉施設に分類されます。
第一次的社会福祉施設は、社会福祉の機能を全面的に担い、さまざまな問題に取り組みます。例えば、家庭や児童福祉施設がこれにあたり、ここではソーシャルワーカーが中心的な役割を果たし、ソーシャルワーカーの協力者として周囲の人は関わっていきます。
第二次的社会福祉施設は、病院や学校、相談所、裁判所、保育所などの他の福祉機構と協力してケースワークを行います。ここではソーシャルワーカーが補足的機能として関わっていきます。
ソーシャルワーカーは、クライアントの問題を理解し、適切な支援を提供するためにサービスを提供しますが、活動の範囲や焦点、強調点は、その施設が公的か私的か、第一次的か第二次的かによって異なります。
社会施設(機関)
社会施設は、社会福祉に関して、ある社会の意志を、あるいはその社会の中にあるグループの意志を表現するために形成された一機関である。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P53引用 国立国会デジタルコレクションより
このように社会福祉の機関についての情報を持っていることはクライエントにサービスを提供する上で有効に作用します。
Process(過程)
ケースワークの過程は本質的に問題解決を目指すものであり、すべての問題を解決することを必ずしも意味しません。むしろ、人生そのものが問題解決の連続であり、人々は常に最大の満足を得るために、自身と外界の調和を図り続けていると考えられます。これは、生まれてから死ぬまで続く絶え間ない変化と適応の過程です。
ソーシャルワーカーの役割は、クライエントが直面する問題の解決を支援することになります。しかし、その支援は問題そのものに直接焦点を当てるだけではなく、クライエントが自分の力で問題に対処できるようにすることを目指していくことが重要です。
問題解決の過程では、日常の小さな問題から大きなジレンマ(葛藤)まで、さまざまな問題に対して意識的・無意識的に取り組むことが含まれます。
また、クライエントが支援を求める理由は、多くの場合、社会的または対人関係のストレスに直面しているときであり、大きく以下の6つの障害があげられます。
①必要な手段や資源が不足している。
②問題の事実や具体的解決方法についての無知や誤解。
③情緒的身体的エネルギーに枯渇している。
④問題が強い感情を引き起こし強い反動となる。
⑤問題が慢性的に長い間その人に影響を与えている。
⑥組織的な習慣や秩序的なものの考え方を発展することができず思考が欠如している。
これらの障害に対処するため、ケースワーカーはクライエントの問題解決を支援するための知識や技術を提供します。また、クライエントの情緒的な障害を取り除き、問題に対処するためのエネルギーを回復させることも重要です。
このように、ケースワークの過程は、クライエントが自分の力で問題を解決できるようにサポートし、彼らの将来の生活に安定をもたらすことを目指しています。これには、クライエントが自分自身の行動や反応を分析し、より適切な行動の型を選択できるように支援することが含まれます。最終的には、特定の問題が解決されるだけでなく、クライエントが問題に対処し、より良い生活を送ることができるようになることが目標です。
ケースワーク過程
ケースワークの過程の意図するものは、その人自身が当面する問題に対処するように助け、この方法によって彼の将来の生活に安定性をもたせるようにすることである。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P71引用 国立国会デジタルコレクションより
部分化
パールマンはケースワーク過程においてクライエントが抱える問題の「部分化」(焦点化・局部化)という点を重要としております。
クライエントが抱える複雑で大きな問題に向き合う際には、問題の「部分化」が必要になります。部分化とは、課題の一部分に焦点を当て、扱いやすい単位に小分けすることを意味します。ケースワークの現場では、家庭福祉施設での夫婦関係、児童相談所での親子関係、あるいは公的扶助機関での経済的課題など、焦点とする領域が異なりますが、どの場合でも課題が大きすぎると、クライエントは圧倒され、問題に向き合うことが難しくなります。
そのため、ソーシャルワーカーは問題のある部分を切り出し、手近な部分に取り組めるように支援します。例えば、親子関係に悩む母親が漠然と「悪い関係を良くしたい」と考える代わりに、「子どもが学校に行きたがらない」といった具体的な行動に分けて取り組むことで、不安が軽減されます。また、精神病院から退院した人が「家族と社会にどう戻ればよいか」という不安に直面する代わりに、まずは「家族と少しずつ接触する」といったステップを踏むことで、無理なく生活に適応していけるようになります。
エゴの働きも、この部分化の必要性に関係します。問題があまりにも大きいと、エゴは逃避や防御反応を示します。そこで、ソーシャルワーカーはクライエントが向き合いやすい小さな単位に問題を分け、段階的に取り組む支援を行います。問題を小分けすることにより、クライエントは「なんとかできるかもしれない」という感覚を持ち、課題解決への意欲が高まります。小さな成功体験が積み重なれば、他の問題への取り組みへのモチベーションも向上します。
このようにケースワーク過程において「部分化」の技法を用いることは、クライエントが大きな課題に圧倒されることなく、適切に処理できるように「小さく分けた課題」に取り組ませることで、彼らの自己効力感を高め、問題解決に導いていく役割を果たしているのです。
ワーカビリティ
「ワーカービリティ」という概念は、クライエントが抱える問題を解決しようとする動機や、支援機関と効果的に関わる能力を指します。これはクライエントがケースワークの援助に対してどの程度反応できるかを示し、ソーシャルワーカーがそのクライエントに合わせた支援を行うための重要な要素です。ワーカービリティは単なる問題解決能力の高さや支援の成果を表すものではなく、クライエントが自身の状況と支援に対して示す意欲や対応力を意味しています。
ソーシャルワーカーは、他の機関や過去の報告から得た情報でクライエントの反応をある程度予測できますが、実際の面接を通じて観察したその時の反応が、最も信頼できる指標になります。クライエントの反応は面接の流れや周囲の状況によって変動するため、柔軟で個別的な対応が求められます。つまり、ケースワークにおいては、クライエントが過去の行動や特性に囚われることなく、新しい対応を引き出せる環境を提供することが大切なのです。
評価においても、クライエントの単なる「強み)」や「弱み」をリスト化するだけではなく、援助の目的に関連する資質を重視します。例えば、クライエントの自我の強さや問題解決のための資質がどのように援助に関連しているかを評価することで、ケースワーカーはその人が支援を受け入れ、自発的に取り組めるように促すことができます。このように、クライエントの資質を慎重に見極め、援助を受け入れる意欲や能力を引き出すことがワーカービリティの核心となります。
ソーシャルワーカーは、クライエントが反応を示す「見込み」を予測する一方で、その日の面接や新たな状況に応じて対応を調整します。クライエントの現時点での「ワーカービリティ」を慎重に観察し、具体的な状況に即して柔軟に支援を行うことで、クライエントの成長を促し、問題解決の支援を効果的に進めることができます。
ワーカービリティ
「ワーカービリティ」という新造語、しかも刺激的なことばを用いることにつ いて、少し説明を加えねばならないと思う。それは、問題を解決してくれる人々と手段とに(大なり小なりの努力と効果性の差異はあるが) 自己を関係させ得るその人の動機づけと能力とをあわせたものの内容を表現しようとする努力により選ばれた。それは、とりも直さず、ある一時点に、クライエントが、自身の問題と施設とに対してもつ彼の力動的な関係である。
ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会P225引用 国立国会デジタルコレクションより
社会福祉士国家試験
社会福祉士国家試験では、第29回に相談援助の理論と方法問101よりパールマンが出題されております。
第29回問101
パールマン(Perlman,H.)が提唱した問題解決アプローチの援助技法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1社会生活技能訓練(SST)の技法を用いる。
2ライフストーリーの書き換えを目指した技法を用いる。
3部分化の技法を用いる。
4強化による行動変容によって適応行動を増やす技法を用いる。
5例外探しの技法を用いる
正解選択肢は3になります。他の選択肢についても簡単に解説します。
1社会生活技能訓練(SST)は認知行動療法の一つとなります。
2ライフストーリーの書き換えはナラティブ(語り)アプローチになります。
4強化による行動変容は、学習理論を基にした行動変容アプローチになります。
5例外探しの技法は、解決志向アプローチの一つとなります。
続いては、人物と内容が入れ替えとなっている問題となります。
パールマンを説明しているものはどの選択肢か考えてみてください。
第32回問101
ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1ランク(Rank,O.)の意思療法は、利用者の過去に着目し、利用者のパーソナリティの構造や自我の働きを捉える診断主義学派の礎となった。
2ロス(Ross,M.)のコミュニティ・オーガニゼーション説は、地域における団体間調整の方法としてインターグループワークを提唱した。
3ホリス(Hollis,F.)の心理社会的アプローチは、診断主義学派と機能主義学派、両アプローチの折衷アプローチであり、両学派の統合を試みた。
4タフト(Taft,J.)ら機能主義学派は、ソーシャルワーカーが所属する機関の機能に着目し、機関におけるソーシャルワーカーの役割を重視した。
5パールマン(Perlman,H.)の問題解決アプローチは、精神分析や自我心理学の理論を否定し、人・状況・その双方の関連性においてケースワークを捉えた。
正解は4になります。
選択肢1は、ランクは機能主義学派に影響を与えました。キーワードは「過去ではなく現在」「機能主義」になります。
選択肢2は、インターグループワークを提唱した人物はニューステッターになります。
選択肢3は、内容がパールマンとなっております。パールマンは折衷アプローチとして統合を試みたことでソーシャルワーク理論史に大きな功績を与えました。
選択肢5は、ホリスの内容となります。キーワードは「状況の中の人」「心理社会的アプローチ」になります。
第24回問92
パールマン(Perlman,H.)が提唱した問題解決アプローチに関する次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1クライエントが問題をもつことを病理であるととらえて、クライエントへの診断と処遇の過程を重視した。
2問題解決の過程をクライエントとともに構築していくことを重視し、クライエントが持つ「解決イメージ」に焦点を当て、短期間で解決に導くことを尊重した。
3クライエントの問題に対して、「この原因がこの結果を生む」という原因と結果の直線的な関係からとらえようとした。
4クライエントが社会的役割を遂行する上で生じる葛藤の問題を重視し、その役割遂行上の問題解決に取り組む利用者の力を重視した。
5ソーシャルワーカーの問題解決能力をワーカビリティと名付け、その向上のためのスーパービジョン過程を重視した。
正解は4になります。この内容がワーカビリティになります。
1は診断主義アプローチになります。
2は解決志向アプローチになります。
3は診断主義アプローチになります。
5はワーカビリティはソーシャルワーカーの能力ではないことを伝えるために間違え選択肢として登場しております。
まとめ
このように、パールマンの「問題解決アプローチ」は、これまでの診断主義アプローチや機能主義アプローチの折衷論として、ソーシャルワークに新しい視点をもたらした理論になります。
彼女はすべての人が問題を通して成長する可能性を持ち、問題解決が人生の一部であると捉えました。その中で、「4つのP(人、問題、場所、過程)」という概念を掲げ、クライエントの人間性を尊重し、支援に適した手法を探ることがソーシャルワークの核とされました。
また、彼女は問題を細分化して一つひとつ取り組む「部分化の技法」と、クライエントが自ら問題解決を図る「ワーカビリティ」を重視しました。これにより、ソーシャルワーカーは支援を通じてクライエントの自立を促し、単なる問題解決以上の成長を支援することができるのです。
このアプローチは、世界中のソーシャルワーク実践に影響を与え、現在もソーシャルワーカーの教育や支援の基礎として広く取り入れられています。
☆参考文献:ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程 著者:ヘレン・ハリス・パールマン、訳者:松本武子、出版社:全国社会福祉協議会 国立国会デジタルコレクションより