はじめに
本記事では、ストレングスモデルについての要点や概要をわかりやすくまとめております。
ストレングスモデルはラップとゴスチャによって提唱されたモデルで、クライエントの「疾患」や「欠陥」、「弱さ」や「できないこと」といったことに焦点を当てることをやめて、その人のもつストレングスに着目したモデルになります。
支援者は歴史がそうであったように、クライエントの「ダメなところ」に目を向け、それを取り除こうと働きかけようとしますが、それらはきっとうまくいくことは少ないでしょう。
本記事を読んだ読者が、ストレングスモデルの視点を持つことで、物事の視点が変わったり、さらなる成長を促すきっかけにつながることがあれば幸いです。
ストレングスモデルとは?
歴史を辿ると、支援者や援助者が、クライエントやクライエントを取り巻く地域・社会の病理的な側面、疾患や障害、異常、できないことに焦点を当てるという考え方や理論が浸透しておりました。
やがて時代が進み、クライエントの弱さではなく、強さに焦点を当てる考え方や芽生えていきます。
そのパラダイムの一つのモデルが「ストレングスモデル」になります。
ストレングスモデルは、精神保健福祉の領域において、チャールズ・A・ラップと、リチャード・J・ゴスチャによって提唱されたモデルになります。
ストレングスモデル:目的
ストレングスモデル実践の目的は、人々のリカバリー、改善、生活の質を変えることを支援することである。
それは、環境と個人両面にわたる幅広い資源を探りだし、確保し、支えることによってもたらされる。
人々は、地域で普通に相互依存的に生活し、楽しみ、働きたいのである。
さらに、実際の支援は、サービスを求めている人々のニーズに合わせて組み立てられる。
引用:ストレングスモデル[第3版]チャールズ・A・ラップ / リチャード・J・ゴスチャ著 田中英樹訳 金剛出版 第3章ストレングスモデルの目的、原則、研究結果 P67より
ストレングスモデルでは、クライエントを患者等ではなく「一人の人間として尊重」して支援を行い、その人がもつさまざまな資源を「探りだし、確保し、支える」ように実践を行います。
この資源は「社会資源や機会、社会関係」といった外的なものもあれば、「願望や能力、自身」といった内的なものもあります。
このようにストレングスモデルでは、「人はみな相互依存して生活をしている」ことを根底に置き、人や社会資源との相互依存を豊かにするべく、さまざまに働きかけます。
ストレングスモデルの重要な主題
1 人が置かれている生活の場の質が、達成と生活の質を決定する。
2 生活がうまくいっている人には目標と夢がある。
3 生活がうまくいっている人は、願望を達成するために、彼らのストレングスを用いている。
4 生活がうまくいっている人は、目標に向かって次の段階に移る自信をもっている。
5 どの時点においても、生活がうまくいっている人は、少なくとも一つの目標、それに関連した才能と次の段階に移る。
6 生活がうまくいっている人は、彼らの目標を達成するために必要な資源への接近方法をもっている。
7 生活がうまくいっている人は、少なくとも一人の意義ある関係をもっている。
8 生活がうまくいっている人は、彼らの目標に関連した機会への接近方法をもっている。
9 生活がうまくいっている人は、資源と機会と意義のある関係への接近方法をもっている。
引用:ストレングスモデル[第3版]チャールズ・A・ラップ / リチャード・J・ゴスチャ著 田中英樹訳 金剛出版 第2章ストレングスの基礎理論 P66 表2.2より
上記はストレングスモデルにおける重要な主題になります。
個人のストレングスである「熱望」「能力」「自信」と、環境のストレングスである「資源」「社会関係」「機会」、そしてそれぞれのストレングス要素間の相互作用が、ストレングスモデルにおいて影響を及ぼす要素として定められております。
このように個人と環境の両方を相互的に着目しアセスメントを行いアプローチをしていきます。
ストレングスモデルの6つの原則
ストレングスモデルでは、その方法の基盤や基本理念として6つの原則が掲げられております。
☆ストレングスモデルの6つの原則
原則1 精神障害者はリカバリーし、生活を改善し高めることができる。
原則2 焦点は欠陥ではなく個人のストレングスである。
原則3 地域を資源のオアシスとする。
原則4 クライエントこそが支援通過の監督者である。
原則5 ワーカーとクライエントの関係性が根本であり本質である。
原則6 私たちの仕事の主要な場所は地域である。
それぞれについて以下触れていきます。
原則1 精神障害者はリカバリーし、生活を改善し高めることができる
クライエント自身が、リカバリーに向けて影響をもたらす能力や、成長や変化の可能性を”すで”に持っているということを大切にします。
よって支援者がクライエントをリカバリーさせる能力を持っているわけではないということです。
例えるなら、クライエント自身がもっている「種」が成長できるように、「土づくり」や「水やり」など成長のための条件を整えていくことを手助けします。
原則2 焦点は欠陥ではなく個人のストレングスである
これまで伝統的に「疾患」や「欠陥」、「診断」や「治療」ということを重視してきたことに目を向けることをやめて、ストレングスモデルは、個人のストレングスに焦点をあて、クライエントと協働することによって成長を促します。
クライエントの願望や夢、どんな資源があり、どんな興味があるのか、またこれまでにどんなことを成し遂げてきたのかなどといったことに焦点をあてることは、自身の動機づけを高めることにもつながります。
原則3 地域を資源のオアシスとする
地域というものは、よりよく生きるための資源でもあり、支援を必要としている人たちに対して、そのきっかけをつくります。
個人のストレングスと環境のストレングスにも着目する上で、地域の中に小さなストレングスを見出すことができるはずと考えます。
クライエントの資源獲得に関して、精神保健福祉サービスに限るのではなく、一般にある資源や人を見出し大切にします。
原則4 クライエントこそが支援通過の監督者である
クライエント自身が権利として、支援を受ける形式や方向を決定することができるという考え方を大切にします。
ストレングスモデルでは、クライエントの承認を得ないで何事も行ってはならず、様々な段階での決定を委ねます。
原則5 ワーカーとクライエントの関係性が根本であり本質である
クライエントと支援者の関係性がないと、あらゆることは休止状態になり、リカバリーの旅へ進めることができなくなってしまいます。
この関係は、クライエントが困難な状態や不安な時期に対して、ストレスを弱め、症状の悪化を軽減させ、クライエントの自信を支える関係でもあります。
原則6 私たちの仕事の主要な場所は地域である
ストレングスモデルでは、地域の中でクライエントと共に活動することを大切にします。
事業所に籠って活動することが好ましくないことは明らかで、その場合は心理的安定を求める場合など限定されるべきものになります。
地域の中で活動することによって、クライエントの評価や様々な機会を得ることができます。
まとめ
以上がストレングスモデルの6つの原則について要点や概要になります。
一人ひとりをかけがえのない個人であることを尊重し、地域を基盤として、個人や環境のストレングスに着目することを大切にします。
「社会福祉は一重にものの見方にあり」
この記事を読んだ方が、人々のストレングスに着目するきっかけになることがあれば幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いします。
☆参考文献:ストレングスモデル[第3版]チャールズ・A・ラップ / リチャード・J・ゴスチャ著 田中英樹訳 金剛出版