社会福祉の知識

インテーク面接(初回面接)の流れやポイントについて解説

カウンセリングや医療、福祉といった対人支援の現場において、相談者と支援者が初めて顔を合わせるインテーク面接(初回面接)は、その後の支援全体の質を左右する極めて重要な時間です。この最初の出会いが、相談者が安心して悩みを打ち明け、問題解決への一歩を踏み出すための土台となります。

しかし、多くの支援者がその重要性を認識しつつも、限られた時間の中で何をどのように進めるべきか、悩むことも少なくありません。本記事では、インテーク面接が持つ本来の目的や具体的な手順を解き明かし、相談者との信頼関係を築きながら、的確に状況を把握するための実践的なポイントを詳しく解説します。

これから対人支援の現場に立つ方はもちろん、改めて基本を見つめ直したい経験者の方にとっても、質の高い面接を実現するための一助となる内容です。




インテーク面接(初回面接)とは

ンテーク面接とは、相談者であるクライエントと支援者が初めて対面する「初回面接」を指す専門用語です。「受理面接」という名称で呼ばれることもあり、カウンセリングや心理療法、福祉、医療といった多岐にわたる対人支援の現場で、その後の援助プロセスを開始するための重要な第一歩として位置づけられています。
この面接の根幹をなす「インテーク(intake)」という言葉は、本来「受け入れる」「取り込む」といった意味を持っています。その語源が示す通り、インテーク面接は、クライエントが抱える問題や複雑な心情を丁寧に受け止め、これから始まる支援の枠組みへと安全に取り込んでいくための入り口としての役割を担います。したがって、単に事務的に情報を聞き出す場ではなく、クライエントが「この人になら話しても大丈夫だ」という安心感を抱けるような、信頼関係を構築する出発点となるのです。この面接を担当する専門家は「インテーカー」と呼ばれ、クライエントの不安を和らげながら、支援の方向性を共に見定めていくという重責を担います。


インテーク面接の目的

インテーク面接は、単にクライエントの情報を集めるための手続き的な時間ではありません。この面接には、その後の支援関係全体を支えるための、明確かつ多層的な目的が存在します。信頼関係の構築から支援の方向性の決定まで、一つひとつの目的を意識して臨むことが、効果的な援助への道を拓きます。


クライエントの来談理由や状況の把握

インテーク面接における最も基本的かつ重要な目的は、クライエントがどのような困難を抱え、何を求めて来談したのかを正確に理解することにあります。この来談理由、すなわち「主訴」を丁寧に聴き取ることなしに、適切な支援計画を立案することはできません。クライエントが語る言葉の表面的な意味だけでなく、その背後にある感情や、これまで一人で抱えてきた苦悩の深さにも耳を傾ける姿勢が求められます。

面接では、問題がいつ頃から始まり、現在に至るまでどのように変化してきたのか、また、その問題がクライエントの日常生活や人間関係にどのような影響を及ぼしているのかを多角的に尋ねていきます。さらに、現在に至るまでの生育歴や家族との関係、職業や学業の状況といった背景情報を把握することで、クライエントという一人の人間を立体的に理解することが可能になります。

こうした情報収集と分析を通じて問題の全体像を捉える作業は「アセスメント(見立て)」と呼ばれ、インテーク面接はその初期段階としての重要な役割を担っているのです。このプロセスを経て、クライエントが直面している困難の本質に迫ることが、効果的な支援の第一歩となります。


所属機関が果たせる役割を明示

クライエントの状況を把握すると同時に、支援者側は自らが所属する機関でどのような援助が提供できるのか、そしてその限界はどこにあるのかを明確に伝える責任があります。クライエントはしばしば、漠然とした期待や強い不安を抱いて来談するため、支援の範囲を具体的に示すことは、現実的な見通しを共有し、無用な誤解を防ぐ上で不可欠です。

この段階では、機関の基本的な方針やカウンセリングの進め方、利用できるサービスの内容、料金体系などを具体的に説明します。そして、クライエントが抱える問題がその機関の専門領域と合致しているかどうかを慎重に判断します。もし、より専門的な治療や異なるアプローチが必要であると判断した場合には、その旨を正直に伝え、クライエントにとって最適と考えられる他の専門機関を紹介する「リファー」という対応も、インテーカーの重要な役割の一つです。

自機関でできることとできないことを誠実に提示する姿勢は、クライエントとの長期的な信頼関係を築く上での基礎となります。


クライエントが援助を受けるかどうかの意思確認

インテーク面接の最終的な目的の一つは、提示された支援内容についてクライエントが十分に理解し、納得した上で、自らの意思で援助を受けるかどうかを決定できるように促すことです。

対人支援は、クライエント自身の主体的な参加があって初めて成立する共同作業です。支援者が一方的に方針を決めて進めるのではなく、クライエントが「ここで支援を受けたい」と心から思えることが、その後の困難なプロセスを乗り越えるための重要な動機づけとなります。

この意思確認は、「インフォームド・コンセント(説明と同意)」の原則に基づいています。面接を通じて得られた情報と、機関から提供される支援内容についての説明を踏まえた上で、クライエントに最終的な選択を委ねるのです。このプロセスは、クライエントの自己決定権を尊重する専門的な姿勢を示すことであり、支援者とクライエントが対等なパートナーとして問題解決に取り組んでいくという関係性を築くための第一歩です。

最終的な決定権は常にクライエント自身にあることを明確に伝え、その選択を尊重する姿勢が、真の信頼関係を育みます。



インテーク面接の主な手順

インテーク面接を円滑に進めるためには、その構造を理解し、段階に応じた適切な関わりを実践することが不可欠です。面接は、導入から終結まで一連の流れを持っており、各段階で果たすべき役割があります。ただし、これはあくまで基本的な枠組みであり、実際にはクライエントの状態や話の展開に応じて、柔軟に対応する姿勢が求められます。


挨拶や自己紹介

面接室に入った瞬間から、インテーク面接は始まっています。最初の挨拶と自己紹介は、クライエントの緊張を和らげ、安心感のある雰囲気を作り出すための重要な第一歩です。

支援者はまず、穏やかな表情と落ち着いた態度でクライエントを迎え入れ、自らの所属機関、職種、そして氏名を明確に伝えます。この自己開示は、支援者がどのような立場の人間であるかをクライエントに示すことで、これから始まる対話の透明性を確保する意味を持ちます。

この最初の数分間のやり取りが、クライエントに「歓迎されている」という感覚を与え、その後の自己開示を促すための土台となるのです。


時間と目的の説明

本格的な対話に入る前に、この面接がどのようなルールのもとで行われるのか、その枠組みをクライエントと共有することが極めて重要です。

具体的には、面接に要する時間(例えば50分間など)と、この時間が何のために使われるのか、つまりインテーク面接の目的を簡潔に説明します。これにより、クライエントは見通しを持つことができ、限られた時間の中で何を話すべきかを考える手助けとなります。また、話された内容のプライバシーは厳守されるという「守秘義務」についても、この段階で明確に伝えます。

ただし、自傷や他害の危険がある場合など、守秘の限界についても誠実に説明しておくことが、後のトラブルを防ぎ、専門家としての信頼性を高めることに繋がります。


記録の許可

面接の内容を正確に把握し、今後の支援に活かすためには、記録を取ることが不可欠です。

しかし、クライエントの目の前で無断でメモを取る行為は、相手に不信感や威圧感を与えかねません。そのため、記録を取る目的を丁寧に説明し、クライエントから明確な許可を得る必要があります。

「今後の支援のために、お話の内容を少し記録させていただいてもよろしいでしょうか」といった形で尋ね、同意を得るプロセスは、クライエントの主体性を尊重する姿勢の表れです。

この小さな配慮が、支援者とクライエントの対等な関係性を築く上で重要な意味を持ちます。


主訴の聴取

面接の枠組みが共有された後、いよいよ対話の中心部分へと入っていきます。

支援者は「本日は、どのようなことでお困りでしょうか」といった、クライエントが自由に語り始められるような開かれた質問を投げかけ、まずは相手が最も話したいと感じていること、すなわち「主訴」に真摯に耳を傾けます。

この段階で最も大切なのは、支援者が性急に評価や判断を下したり、安易なアドバイスをしたりせず、ひたすら傾聴に徹することです。クライエントが自身の言葉で、自身のペースで困難を語るプロセスそのものが、問題整理の第一歩となります。

支援者は、相槌やうなずき、感情の反映といった技法を用いながら、クライエントの語りに寄り添い、深く理解しようと努めます。


詳細な情報収集

主訴を十分に聴き取った後、その問題の背景や全体像をより深く理解するために、関連する情報について尋ねていきます。

このプロセスは、単なる質問の連続ではなく、クライエントの語りに自然に寄り添う形で進められるべきです。例えば、問題がいつから始まり、どのような状況で悪化するのか、これまでどのように対処してきたのかといった具体的な経過を尋ねます。さらに、クライエントの生育歴や家族関係、現在の生活状況、心身の健康状態など、一見すると主訴とは直接関係ないように思える情報も、問題の根本的な原因や、クライエントが持つ強み(リソース)を理解する上で重要な手がかりとなることがあります。

ただし、この情報収集がクライエントにとって尋問のように感じられないよう、常に相手の感情的な反応に配慮し、質問の意図を丁寧に説明することが求められます。


終結(次回予約)

約束の時間が近づいてきたら、面接を終結させる準備に入ります。突然話を打ち切るのではなく、終了時刻の5分から10分前には「そろそろお時間となりますが」と予告することで、クライエントは心の準備をすることができます。

終結の段階では、まずその日の面接で話された内容を支援者が簡潔に要約し、認識にずれがないかを確認します。そして、今後の進め方について、継続して面接を行うのか、あるいは他の機関を紹介するのかといった方針を具体的に提示します。継続する場合、次回の予約日時を調整し、クライエントが安心してその日を迎えられるようにします。

最後に、何か質問がないかを確認し、クライエントが抱える疑問や不安を少しでも解消した上で面接を終えることが、次への繋がりを確かなものにします。



インテーク面接のポイント

インテーク面接の質を高め、クライエントとの間に確かな信頼関係を築くためには、手順を追うだけでなく、面接全体を貫くべき重要な心構えと技術があります。これらのポイントを意識することが、クライエントが安心して自己開示できる安全な空間を創り出し、実りある面接へと導きます。


傾聴と共感の姿勢

インテーク面接の成否は、支援者がいかにクライエントの話に深く耳を傾けられるかにかかっていると言っても過言ではありません。

この「傾聴」とは、単に言葉を聞き取るだけでなく、その背後にある感情や、言葉にならない思いまでも受け止めようとする積極的な関わりです。支援者は自らの価値観や判断を一旦脇に置き、クライエントの世界をその人自身の視点から理解しようと努めます。

この傾聴の姿勢と密接に結びつくのが「共感」です。これは、クライエントの感情をあたかも自分自身のもののように感じながらも、それに飲み込まれることなく、客観性を保ち続ける専門的な態度を指します。適度な相槌やうなずき、あるいは「それはお辛かったですね」といった感情を反映する言葉を通じて、クライエントに「自分の気持ちを理解してもらえている」という感覚を伝えることができます。

この共感的な理解が示されることで、クライエントは孤独感を和らげ、より深く自己を探求していく勇気を得るのです。


プライバシーの配慮

クライエントが自身の最も個人的でデリケートな問題を語るためには、その内容が絶対に安全に守られるという確信が必要です。

プライバシーへの配慮は、信頼関係を築く上での絶対的な基盤となります。物理的な環境設定として、外部に声が漏れる心配のない個室を用意することは最低限の条件です。面接室の配置においても、ドアから離れた位置に椅子を置く、あるいは支援者がドア側に座るといった工夫が、クライエントの安心感を高めます。

さらに、面接の冒頭で守秘義務について明確に説明することも不可欠です。どこまでが秘密として守られ、どのような場合に例外(自傷他害の危険など)があり得るのかを具体的に伝えることで、専門家としての誠実さを示し、クライエントが話す内容を自らコントロールできるという感覚を持つことができます。

記録の取り扱いや保管方法についても透明性を保つなど、プライバシー保護に対する一貫した姿勢が、クライエントの信頼を育みます。


非言語コミュニケーションの活用

人と人とのコミュニケーションは、話される言葉の内容だけで成り立っているわけではありません。表情、視線、声のトーン、姿勢、ジェスチャーといった「非言語的コミュニケーション」が、実際にはメッセージの多くを伝えています。

支援者は、自らが発する非言語的なサインがクライエントに与える影響を意識する必要があります。穏やかな表情、柔らかい視線、落ち着いた声の調子、やや前傾した姿勢などは、「あなたの話に関心を持っています」という受容的なメッセージを伝えます。

同時に、クライエントが示す非言語的なサインに注意を払うことも極めて重要です。うつむいた表情、こわばった身体、かすかな声の震えなどは、言葉以上にクライエントの内的状態を雄弁に物語ることがあります。言葉と非言語的な表現の間に食い違いが見られる場合には、そこにクライエントの葛藤や未解決の感情が隠されている可能性があります。

これらのサインを敏感に察知し、時には「何かお話しにくいことがあるようにお見受けしますが」と、その点に優しく触れることで、対話がより深いレベルへと進展することがあります。


沈黙を恐れない

面接中に会話が途切れ、沈黙が訪れると、多くの支援者は気まずさや焦りを感じ、何か言葉を発しなければならないという衝動に駆られがちです。しかし、この「沈黙」は、クライエントにとって非常に重要な意味を持つ時間であることが少なくありません。

沈黙は、クライエントが次に何を話すべきか言葉を探していたり、自身の内面で湧き上がってきた感情を整理していたり、あるいは話しにくい事柄を口にする覚悟を決めていたりするサインかもしれないのです。

支援者がこの沈黙に耐えられず、性急な質問でそれを破ってしまうと、クライエントの深い内省のプロセスを妨げてしまう恐れがあります。沈黙を恐れず、それをクライエントのための大切な時間として尊重し、穏やかに待つ姿勢が求められます。この受容的な沈黙は、クライエントに「急かされずに自分のペースで考えて良いのだ」という安心感を与え、結果として、より本質的な語りを引き出すことに繋がるのです。

沈黙が長く続く場合には、クライエントの表情を観察し、必要であれば「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけるといった配慮が有効です。



まとめ

インテーク面接は、単に情報を収集する手続き的な初回面接ではなく、クライエントとの信頼関係を築き、その後の支援全体の礎を築くための決定的に重要な時間です。支援者は、傾聴と共感の姿勢を核としながら、安心できる環境を提供し、クライエントが自らの言葉で困難を語れるよう丁寧に寄り添うことが求められます。

本記事で解説した目的や手順、そして各ポイントを意識し実践することで、面接の質は格段に向上します。この最初の出会いを大切にし、クライエントの主体性を尊重する関わりを心がけることが、効果的な援助への道を拓き、クライエントが抱える問題の解決に向けた、真の協働関係を育む第一歩となるのです。


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