社会福祉の知識

【認知症支援】4つの種類と症状についてポイント解説!

ご家族の物忘れに「もしかして?」と不安を感じていませんか。何度も同じことを聞かれたり、物の置き場所を思い出せなかったり。その変化は、単なる加齢によるものか、それとも認知症のサインなのか、戸惑うことも多いでしょう。

認知症は誰にとっても身近なテーマですが、正しい知識がないと、ご本人もご家族も不安が募ってしまいます。しかし、適切な理解は、穏やかな未来を築くための大切な第一歩です。

この記事では、認知症の基本的な知識から主な種類、そして明日からできる関わり方まで、ポイントを絞って解説します。共に理解を深めていきましょう。




認知症とは?

「認知症」という言葉は、特定の病気の名前を指すものではありません。

これは、様々な原因によって脳の神経細胞が傷ついたり、その働きが低下したりすることで、記憶力や判断力といった認知機能が損なわれ、結果として日常生活全般に支障が出ている状態を指す言葉です。この「日常生活に支障が出ている」という点が、非常に重要なポイントとなります。

多くの人が混同しやすいのが、「加齢による物忘れ」との違いです。歳を重ねることで生じる物忘れは、体験した事柄の一部を忘れることが主です。昨日の夕食のおかずが何だったか思い出せなくても、食事をしたという事実そのものは覚えています。誰かにヒントをもらえれば、「ああ、そうだった」と思い出すこともできるでしょう。これは脳の生理的な変化の範囲内です。

一方で、認知症の中核的な症状である記憶障害は、体験そのものがすっぽりと抜け落ちてしまうという質的な違いがあります。食事をしたこと自体を忘れてしまい、食後すぐに「ご飯はまだ?」と尋ねるようなケースがこれにあたります。出来事そのものが記憶として定着していないため、ヒントを与えられても思い出すことが困難です。

このように、忘れている内容の深刻さや、それが日常生活に与える影響の度合いが、両者を区別する大きな指標となるのです。


認知症の主な症状

認知症と一言で言っても、その原因となる病気は一つではなく、複数の種類が存在します。そして、どの病気が原因であるかによって、現れる症状の傾向や進行の仕方、さらには治療やケアの方法も大きく異なってきます。

そのため、ひとくくりに「認知症だから」と考えるのではなく、その方の症状がどのタイプに当てはまるのかを理解することは、適切な支援を行う上で重要です。

ここでは、認知症の中でも特に代表的とされる「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の4つの種類について、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。


アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、すべての認知症の中で最も多くの割合を占めており、その中核には新しい出来事を記憶する能力の低下があります。これは、脳内にアミロイドβやタウといった特殊なたんぱく質が異常に蓄積し、神経細胞が少しずつ壊れていくことで引き起こされます。特に、記憶を司る「海馬」という領域から萎縮が始まることが多く、これが初期症状に大きく影響します。

このタイプの認知症では、ほんの数分前や数時間前の出来事を忘れてしまうという特徴が見られます。朝、家族と交わした会話の内容を覚えていなかったり、約束したこと自体を忘れてしまったりします。

また、進行に伴い、今日が何月何日なのか、今いる場所がどこなのかが分からなくなる「見当識障害」や、計画を立てて物事を実行することが難しくなる「実行機能障害」も現れます。慣れていたはずの料理の手順が分からなくなったり、買い物で何を買うべきか混乱したりする様子が見られることもあります。初期の段階では、ご本人が自身の物忘れに気づいて不安を感じたり、それを隠そうと取り繕ったりすることもあります。

このように、アルツハイマー型認知症は記憶障害を主軸として、ゆっくりと時間をかけて進行していくため、ごく初期のサインを見逃さないことが大切です。


血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が原因となって発症するタイプの認知症です。

脳の血管が詰まったり破れたりすることで、その先の神経細胞に酸素や栄養が届かなくなり、細胞が壊死してしまうことで認知機能の低下が引き起こされます。このため、脳血管障害の既往がある方や、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを抱える方に多く見られる傾向があります。

この認知症の最大の特徴は、症状の現れ方が一様ではない「まだら認知症」と呼ばれる状態です。脳のダメージを受けた部分の機能は著しく低下しますが、ダメージを受けていない部分の機能は比較的保たれるため、できることとできないことの差がはっきりと現れます。記憶力はしっかりしているのに、注意力が散漫になったり、計画を立てて行動することができなかったり、というように能力のばらつきが見られます。

また、症状の進行もアルツハイマー型とは異なります。脳血管障害が再発するたびに、まるで階段を一段下りるように、ガクンと段階的に悪化することが多いのが特徴です。さらに、感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」という症状も見られやすく、些細なことで怒ったり、突然泣き出したりすることがあります。手足の麻痺や歩行障害、ろれつが回らないといった身体的な症状を伴うことも少なくありません。

このように、血管性認知症の理解には、その背景にある脳血管障害と、それによって生じる特有の症状のパターンを把握することが重要となります。


レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、「レビー小体」という特殊なたんぱく質が脳の大脳皮質や脳幹に集まることで発症します。

アルツハイマー型、血管性に次いで多いとされ、その症状には非常に際立った特徴があります。この認知症を理解する上で鍵となるのは、他のタイプにはあまり見られない特有のサインに気づくことです。

最も代表的な症状の一つが、非常にリアルで具体的な「幻視」です。本人には「部屋の隅に知らない子どもが座っている」「壁に虫がたくさん這っている」といった光景が、現実の映像としてありありと見えています。そのため、それを誰かに伝えようとしたり、追い払おうとしたりすることがあります。周囲から見れば奇妙な言動に映るかもしれませんが、ご本人にとっては紛れもない事実なのです。

二つ目の特徴は、認知機能の「変動」です。一日の中でも、時間帯によって状態が大きく変わることがあります。ついさっきまで普通に会話ができていたのに、急にぼーっとして反応が鈍くなったり、うとうとしたりすることが頻繁に見られます。この波のように変化する状態は、周囲の人が対応に戸惑う原因にもなります。

さらに、手の震えや筋肉のこわばり、小刻みで転びやすい歩行といった、パーキンソン病によく似た運動症状(パーキンソン症状)が現れることも大きな特徴です。また、初期症状として、睡眠中に大声で叫んだり、手足を激しく動かしたりする「レム睡眠行動異常症」が見られることもあり、診断の重要な手がかりとなります。


前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、他の認知症とは大きく異なる特徴を持つタイプです。その名の通り、理性や人格、計画性を司る「前頭葉」と、言語の理解などを担う「側頭葉」が限定的に萎縮することで発症します。

このため、初期症状として現れるのは物忘れではなく、人格の変化や社会性の欠如といった行動面での問題です。比較的若い世代、特に65歳未満で発症する若年性認知症の原因としても少なくありません。

この認知症になると、これまで穏やかだった人が自己中心的になったり、他人の感情に無頓着になって失礼な発言をしたりすることがあります。社会的なルールや常識を守ることが難しくなり、信号を無視したり、お店の物を断りなく取ってしまったりといった、反社会的な行動が見られることもあります。また、毎日同じ時間に同じコースを散歩するなど、決まりきった行動を頑なに繰り返す「常同行動」も特徴的な症状の一つです。

アルツハイマー型認知症と大きく違うのは、初期の段階では記憶力が比較的保たれている点です。そのため、周囲の人々はこれらの変化を病気の症状として捉えにくく、「性格が変わってしまった」「わがままになった」と誤解してしまうことが少なくありません。ご本人に病気の自覚がないことも多く、発見や診断が遅れがちになる傾向があります。人格や行動面の著しい変化に気づいた際には、このタイプの認知症の可能性も視野に入れることが大切です。



認知症の中核症状について

認知症の症状を深く理解するためには、「中核症状」という概念を知ることが不可欠です。

これは、脳の神経細胞が壊れてしまうことによって直接引き起こされる、認知機能の基本的な障害を指します。認知症を発症した方であれば、その種類や進行度合いによって差はあれど、誰にでも現れる可能性のある、いわば症状の土台となる部分です。

最も代表的な中核症状は、先にも触れた記憶障害です。新しい出来事を覚えられず、少し前の会話や行動を忘れてしまうことがこれにあたります。次に、時間や場所、人物との関係性が分からなくなる見当識障害があります。今日の日付が答えられなくなったり、慣れた道で迷ったり、家族の顔が分からなくなったりする症状です。

また、物事を計画し、順序立てて実行することが難しくなる実行機能障害も生活に大きな影響を与えます。料理の段取りが組めなくなったり、電化製品の操作に戸惑ったりするのは、この障害が関係しています。さらに、脳の特定の領域が損傷することで、言葉がうまく出てこない、あるいは相手の言うことが理解できない失語、身体は動くのに一連の動作ができない失行、見ている物が何であるか認識できない失認といった症状も現れます。

これらの脳機能の直接的な低下が、ご本人の日常生活における様々な困難の根本的な原因となっているのです。


認知症の周辺症状について

認知症の方に見られるもう一つの重要な症状群が「周辺症状」です。

これは、先ほど説明した「中核症状」を土台として、二次的に現れる行動面や心理面の症状を指します。正式にはBPSD(行動・心理症状)と呼ばれ、ご本人の元々の性格、身体的なコンディション、そして周囲の環境や人間関係といった様々な要因が複雑に絡み合って生じます。

この周辺症状は、ご本人にとっても辛いものですが、介護をするご家族にとって大きな負担となることが少なくありません。具体的な症状としては、理由もなく歩き回る「徘徊」、事実ではないことを固く信じ込む「妄想」、特に「誰かが財布を盗んだ」といった物盗られ妄想は代表的です。また、不安や焦りからうつ状態になったり、逆に攻撃的になったりすることもあります。幻覚や幻聴、睡眠障害、介護への抵抗などもこの周辺症状に含まれます。

しかし、最も大切なことは、これらの症状が周囲の関わり方や環境を調整することで、改善したり、和らげたりできる可能性があるという点です。中核症状そのものをなくすことは難しいですが、周辺症状はご本人が感じている不安や混乱、不快感のサインであることが多いのです。なぜそのような行動をとるのか、その背景にあるご本人の気持ちを理解しようと努めることが、対応の第一歩となります。

この周辺症状への理解と適切なケアこそが、ご本人とご家族双方の穏やかな生活を守る鍵となるのです。



認知症と社会資源

「認知症かもしれない」という不安や、診断後の戸惑いを、ご家族だけで抱え込む必要はまったくありません。

私たちの暮らす地域には、ご本人とご家族の生活を支えるための様々な相談窓口やサービス、いわゆる「社会資源」が数多く整備されています。これらを適切に活用することが、先の見えない不安を具体的な安心へと変えるための重要な一歩となります。

その中心的な役割を担うのが、各地域に設置されている「地域包括支援センター」です。ここは、高齢者の暮らしに関する総合相談窓口であり、保健師や社会福祉士といった専門職が、それぞれの状況に応じたアドバイスや必要なサービスへの橋渡しを行ってくれます。どこに相談して良いか分からない時、まず最初に訪ねるべき場所がここです。

具体的な支援としては、介護保険制度を利用したサービスが生活の大きな柱となります。日中に施設へ通い、専門的なケアを受けながら他者と交流するデイサービス(通所介護)、一時的に施設に宿泊することでご家族の休息時間を確保するショートステイ(短期入所生活介護)、自宅での生活を専門のスタッフが支える訪問介護など、多岐にわたるサービスの中から必要なものを組み合わせて利用できます。

また、認知症のご本人やご家族が気軽に集い、情報交換や悩みの共有ができる「認知症カフェ」や「家族会」といったコミュニティも、孤独感を和らげる大切な支えとなります。これらの社会資源を積極的に利用することは、ご本人らしい生活を長く続け、ご家族が介護に追い詰められないために不可欠な知恵なのです。


認知症への基本的なかかわり

認知症の方と接する上で最も大切なことは、相手の言葉や行動を頭ごなしに否定せず、まずはその気持ちを受け止める姿勢です。ご本人が見ている世界や感じている感情を尊重し、共感的に寄り添うことが、穏やかな関係性を築くための土台となります。

認知症によって生じる記憶の欠落や認識のズレは、ご本人にとっては紛れもない「現実」です。周囲がその現実を正そうとすると、ご本人は混乱し、プライドを傷つけられ、強い不安や孤立感を抱くことになります。その結果、かえって興奮したり、心を閉ざしてしまったりすることも少なくありません。「財布を盗られた」という訴えに対して、「誰も盗っていません」と事実を突きつけるのではなく、「大切なものが無くなって心配ですね」と、まずはその不安な気持ちに寄り添うことが大切です。その上で、「一緒に探してみましょうか」と声をかけることで、ご本人は自分の気持ちが理解されたと感じ、少しずつ落ち着きを取り戻すことができます。

また、ご本人が何かを失敗してしまった時も、それを責めるような言動は避けるべきです。ご本人が一番、自分の変化に戸惑い、傷ついているかもしれません。その自尊心を守るように、さりげなく手伝ったり、穏やかな口調で話したりする配慮が求められます。事実を正すことよりも、心を繋ぎ、安全と尊厳が守られているという安心感を提供すること。これが、認知症ケアの基本となるのです。


ピープルファーストの視点

認知症支援の議論において、根底に流れるべき重要な考え方が「ピープルファースト」という視点です。これは、「認知症の人」として一括りに捉えるのではなく、認知症という状態にある「一人の人間」として、その人自身に最大限の敬意を払う姿勢を意味します。病気の症状がその人の全てを覆い尽くしているわけでは決してありません。

認知症と診断されても、その人がこれまで歩んできた人生の物語、築き上げてきた価値観、そして喜怒哀楽の感情が失われるわけではありません。その人ならではの個性や好み、得意なことは、変わらずにその人の中に存在し続けています。私たちの支援は、病気の側面ばかりに目を向けて「できないこと」を管理するのではなく、その人の中に残っている力や「できること」に光を当て、その人らしい生活が継続できるように支えることを目的とすべきです。

具体的な関わりとしては、ご本人の意思を尊重し、些細なことでも選択の機会を提供することが挙げられます。今日着る服や、お茶の時間に飲むものを、本人に選んでもらうだけでも、それは自己決定の尊重につながります。また、その方の得意だったことや好きだったことに基づいた役割をお願いすることも、自己肯定感を高める上で有効です。

病気のレッテル越しに相手を見るのではなく、一人の人生の先輩として、対等な個人として向き合うこと。このピープルファーストの視点こそが、ご本人の尊厳を守り、穏やかな関係性を育むための核心となるのです。



まとめ

ここまで、認知症の基本的な知識から4つの主な種類、症状の現れ方、そして私たちにできる関わり方について解説してきました。認知症は一つの病気ではなく、その原因によって症状の現れ方が大きく異なること、そして、ご本人の行動の背景には様々な思いや混乱が隠れていることをご理解いただけたのではないでしょうか。

最も大切なのは、認知症という病気の側面だけでその人を見るのではなく、これまで生きてこられた一人の人間として、その尊厳を尊重し続けることです。中核症状への理解を深め、周辺症状に対しては「なぜだろう」とその背景にある心に寄り添う姿勢が、ご本人とご家族の穏やかな時間につながります。変化に戸惑い、不安を感じたときには、決して一人で抱え込まないでください。地域包括支援センターをはじめとする社会資源は、皆さんのすぐそばにあります。

この記事を通じて得た知識が、漠然とした不安を和らげ、明日からの関わりに少しでも具体的なヒントをもたらすことができたなら幸いです。正しい理解という第一歩を踏み出すことが、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、希望ある未来を築くための力となるはずです


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