コラム

ペアレントトレーニングとは?基本姿勢や具体例をわかりやすく解説

子育ては、計り知れない喜びがある一方で、多くの親御さんにとって悩みが尽きない道のりでもあります。

特に、お子さんが発達障害と診断された場合、その特性からくる行動やコミュニケーションの課題に直面し、「どうすればいいのだろう」と途方に暮れることもあるでしょう。時には周りの理解が得られず孤立を感じたり、試行錯誤の中で「私の育て方が悪いのかも」と、ご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。

しかし、決して一人で抱え込まないでください。子育ての悩みはあなただけの特別なものではありません。そして、お子さんの特性を理解し、前向きな変化を促すための具体的なアプローチがあるのです。それが「ペアレントトレーニング」です。




ペアレントトレーニングとは?

ペアレントトレーニングとは、発達障害をはじめとする特性を持つお子さんの行動に対し、保護者の方が適切な関わり方を学ぶためのプログラムです。これは、親御さんの子育ての「やり方」を学ぶというよりも、お子さんの行動を「どのように理解し、対応するか」という視点やスキルを身につけることを目的としています。

お子さんの困った行動を減らし、望ましい行動を増やせるように、科学的な根拠に基づいた行動療法や学習理論を取り入れています。具体的には、お子さんの良い行動に注目して褒める方法、効果的な指示の出し方、癇癪などの不適切な行動への冷静な対処法などを学びます。

このトレーニングは、決して親御さんを責めたり、子育てのダメ出しをするものではありません。むしろ、日々の育児に奮闘する親御さんが自信を持って、より楽しく子育てに取り組めるようにサポートするものです。親御さんが具体的なスキルを身につけることで、お子さんの行動がポジティブな方向に変化し、それによって親子の関係性がより穏やかで温かいものへと改善されることを目指します。

結果として、親御さんの育児ストレスが軽減され、ご家族全体の生活の質が向上することにも繋がります。


ペアレントレーニングの歴史

ペアレントトレーニングは、そのルーツを1960年代の行動療法に持ちます。行動療法は、望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための具体的なアプローチを研究する心理学の一分野です。当初は、病院や施設に入所している子どもたちの問題行動に対応するために開発されました。

その後、行動療法の考え方が一般家庭での子育てにも応用され始めました。特に、発達障害のあるお子さん、例えばADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉スペクトラム症のお子さんの保護者から「どのように関われば良いのか」「困った行動にどう対応すればいいのか」という切実なニーズが高まっていたのです。これを受けて、行動療法の専門家たちが、親御さん自身が子どもの行動のメカニズムを理解し、具体的なスキルを身につけられるようなプログラムを開発しました。

1970年代に入ると、ペアレントトレーニングは体系化され、欧米を中心に広く普及していきます。臨床研究を通じてその効果が科学的に証明されていき、現在では世界中で、発達障害のあるお子さんだけでなく、子育てに悩む多くの保護者にとって有効な支援プログラムとして認識されています。日本においても、近年その重要性が注目され、医療機関や子育て支援施設などで導入が進められています。長い歴史の中で培われた知識と実践が、現代の親御さんの子育てを力強く支えているのです。



発達障害の種類|脳の機能の違いを知る

発達障害と一口に言っても、その種類は多岐にわたり、それぞれのお子さんによって特性や現れ方は大きく異なります。

これらの障害は、脳の機能的な違いによって生じると考えられており、特定の情報処理や社会性の発達に困難を伴うことが特徴です。お子さんの行動を理解し、適切なサポートを行うためには、まずお子さんがどのような発達特性を持っているのかを知ることが、ペアレントトレーニングを実践する上での大切な第一歩となります。

発達障害は主に以下の種類に分類され、それぞれに特徴的な症状が見られます。これらの違いを理解することで、お子さんの「困った行動」の背景にあるものを推測しやすくなり、より的確な関わり方を考えるヒントになります。お子さんの特性を深く知ることは、親御さんが抱える戸惑いや不安を軽減し、お子さんへの理解を深めることに繋がります。


自閉症スペクトラム症(ASD)

自閉症スペクトラム症(ASD)は、対人関係や社会的なコミュニケーションにおける困難、そして限定された興味や反復的な行動を主な特性とする発達障害です。この特性は、お子さんによって現れ方が非常に多様であるため、「スペクトラム(連続体)」という言葉が用いられています。
ASDのお子さんは、言葉の裏にあるニュアンスを理解することや、相手の表情や仕草から感情を読み取ることが難しい場合があります。そのため、周囲とのコミュニケーションにズレが生じやすく、集団での活動で孤立を感じてしまうこともあるかもしれません。また、特定の物事に強いこだわりを持ったり、変化を極端に嫌がることがあります。決まった手順やルーティンが崩れると、不安や混乱から強い癇癪を起こしてしまうことも珍しくありません。

感覚の過敏さや鈍感さもASDのお子さんによく見られる特性です。例えば、特定の音や光、肌触りを極端に嫌がったり、逆に痛みを感じにくいといった感覚の違いがあります。これらの特性を理解することは、お子さんがなぜそのような行動をとるのか、何に困っているのかを知る上で非常に重要です。

親御さんがお子さんの感覚特性を考慮した環境を整えたり、コミュニケーションの方法を工夫することで、お子さんの不安を軽減し、安定した行動を促すことができるでしょう。


アルペルガー症候群

アスペルガー症候群は、かつて自閉症スペクトラム症の中の一類型として区別されていましたが、現在は「自閉症スペクトラム症」に統合されています。しかし、その特性を理解することは、今なお多くの親御さんにとって有益な情報です。アスペルガー症候群と診断されていたお子さんの特徴は、言語発達の遅れが目立たない一方で、対人関係や社会的なコミュニケーションの困難、そして限定的な興味や反復的な行動が見られる点にありました。

言葉でのやり取りは流暢に見えるため、一見すると発達上の問題がないように映ることがあります。しかし、会話の中で相手の気持ちを推し量ったり、状況に応じた適切な言葉を選んだりすることに難しさを感じることが少なくありません。そのため、誤解が生じやすく、人間関係において戸惑いやストレスを抱えやすい傾向があります。

また、特定の分野に強い興味を持ち、その知識を深く掘り下げていくことは得意ですが、興味のないことには関心が向きにくいという特性もあります。この強い興味は、お子さんの才能の源となる一方で、周囲との共通の話題を見つけにくくすることもあります。変化への適応が苦手な点や、特定の感覚に過敏または鈍感である点も、自閉症スペクトラム症の特性と共通しています。

これらの特性を理解し、お子さんの強みを活かしながら、社会的なルールやコミュニケーションのスキルを段階的に教えていくことが、お子さんの成長をサポートする上で大切になります。


注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主要な特性によって特徴づけられる発達障害です。これらの特性は、お子さんの日常生活や学習、社会生活においてさまざまな困難を引き起こすことがあります。

「不注意」の特性を持つお子さんは、集中力を持続させることが難しく、課題や遊びの途中で気が散りやすかったり、細かいミスが多い傾向があります。持ち物をなくしやすかったり、指示を最後まで聞くことが苦手な場合もあります。学校の授業でぼんやりしてしまったり、宿題に取り組むのに時間がかかりすぎたりすることが、親御さんにとっても悩みの種となることがあります。

「多動性」の特性を持つお子さんは、落ち着きがなく、じっとしていることが難しいという特徴があります。授業中に席を離れたり、歩き回ったり、体を絶えず動かしたりする様子が見られます。静かに遊ぶことが苦手で、常に何かをしていたいという欲求が強いことがあります。

「衝動性」の特性を持つお子さんは、深く考える前に行動を起こしてしまう傾向があります。会話中に人の話を遮ってしまったり、順番を待つことができなかったり、危険な行動に走ってしまうこともあります。感情のコントロールが難しく、些細なことでカッとなったり、すぐに手が出てしまったりすることもあります。

ADHDの特性は、お子さんの成長とともに現れ方が変化することもありますが、これらの特性を理解し、お子さんの状況に合わせた環境調整や声かけの工夫をすることで、お子さんが自分の能力を最大限に発揮し、自信を持って生活できるようサポートすることが可能です。


学習障害(LD)

学習障害(LD)、または限局性学習症(SLD)は、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算するといった特定の学習能力のうち、いずれか一つ以上の習得や使用に著しい困難がある発達障害です。これは、単に「勉強が苦手」というレベルではなく、脳の機能的な偏りによって、特定の情報処理に困難が生じている状態を指します。

LDのお子さんは、知的な能力には問題がないにも関わらず、特定の学習分野で極端なつまづきを見せることが特徴です。例えば、文字の読み書きに困難がある「読字障害(ディスレクシア)」のお子さんは、文字を一つ一つ追うことが難しかったり、鏡文字を書いてしまったり、音読がぎこちないといった様子が見られます。文章の内容を理解するのに時間がかかったり、読むことを極端に嫌がったりすることもあります。

また、算数の計算や推論に困難がある「算数障害(ディスカリキュリア)」のお子さんは、数字の概念を理解することが難しかったり、繰り上がりや繰り下がりの計算で混乱したり、図形の問題を解くのが苦手だったりします。時計を読むことや、お小遣いの計算など、日常生活での数に関する問題にも苦労することがあります。

書くことに困難がある「書字障害(ディスグラフィア)」のお子さんは、文字の形を整えるのが難しかったり、漢字を覚えにくかったり、文章を構成することが苦手だったりします。たくさん書くことで手が疲れてしまい、学習意欲の低下に繋がることもあります。

これらの困難は、お子さんの努力不足によるものではなく、脳の特性によるものです。そのため、お子さんの特性に合わせた個別的な指導や、情報提示の方法を工夫することが非常に重要になります。親御さんがLDの特性を理解し、学校と連携しながら適切なサポートを行うことで、お子さんの学習意欲を維持し、自信を持って学ぶことができるようになります。



ペアレントトレーニングで大切な要素

ペアレントトレーニングは、お子さんの行動を理解し、前向きな変化を促すための具体的なスキルを学ぶプログラムです。その核となるのは、行動分析学に基づいたいくつかの重要な要素です。これらの要素を理解し、日々の生活の中で実践することで、親御さんはお子さんとの関わり方を変え、より良い親子関係を築くための力を身につけることができます。

ペアレントトレーニングの目的は、お子さんの「困った行動」だけに着目するのではなく、お子さんの良い面や望ましい行動を増やしていくことにあります。そのためには、親御さん自身の「見方」や「捉え方」を少し変えることも必要になります。ここでは、ペアレントトレーニングを構成する主要な要素について、それぞれ詳しく見ていきましょう。これらの知識は、お子さんの特性を深く理解し、効果的な支援を行うための羅針盤となるはずです。


子どもの良いところ探し

ペアレントトレーニングにおいて、最も基本的でありながらも非常に重要な要素の一つが「子どもの良いところ探し」です。日々の忙しさや、お子さんの「困った行動」にばかり目が向きがちな中で、意識的にお子さんの良い面、頑張っている点、成長している部分を見つけ出し、それを具体的に伝える練習をします。

発達障害のお子さんの場合、一般的な発達段階とは異なる特性を持つため、親御さんは「なぜうちの子はこれができないのだろう」と、できないことに意識が向きがちになるかもしれません。しかし、お子さんは常に何かを学び、成長しようと努力しています。例えば、自分からおもちゃを片付けようとした、挨拶ができた、難しい課題に少しの間でも取り組めた、怒らずに自分の気持ちを伝えようとした、など、どんなに小さなことでも構いません。

これらの「良いところ」を見つけたら、具体的な言葉で褒めることが大切です。「えらいね」「すごいね」といった漠然とした褒め言葉ではなく、「〇〇ができたね」「△△しようと頑張ったね」のように、お子さんのどのような行動が良かったのかを明確に伝えます。これにより、お子さんは自分が何をすると喜ばれるのかを理解しやすくなり、その行動を繰り返そうという意欲が高まります。

「子どもの良いところ探し」は、お子さんの自己肯定感を育むだけでなく、親御さん自身の視点を変え、子育てに対する肯定的な感情を増やす効果もあります。お子さんの良い面に目を向けることで、親子の間に温かいコミュニケーションが生まれ、お互いにとって心地よい関係性を築くための土台となります。日々の生活の中で、意識して「良いところ探し」の時間を設けてみましょう。


行動分析(ABC分析)

お子さんの「困った行動」に直面したとき、多くの親御さんはその行動そのものに注目しがちです。しかし、ペアレントトレーニングでは、行動の背景にある要因を理解するために「行動分析(ABC分析)」という手法を用います。これは、問題となる行動がなぜ起きるのか、そしてその行動がどのように維持されているのかを客観的に把握するための非常に有効なツールです。ABC分析の「A」はAntecedent(先行条件)、「B」はBehavior(行動)、「C」はConsequence(結果)の頭文字を表しています。

まず「A(先行条件)」では、行動が起きる前に何があったか、どのような状況だったかを観察します。例えば、おもちゃを取り上げられた、お腹が空いていた、眠たかった、騒がしい場所にいた、親に何かを頼まれたなど、行動の引き金となった出来事や環境を具体的に記録します。

次に「B(行動)」では、実際に起きた問題行動そのものを具体的に記述します。例えば、大声で叫んだ、床に座り込んだ、物を投げた、人を叩いたなど、客観的に見てどのような行動だったのかを明確にします。このとき、お子さんの気持ちや意図を推測するのではなく、見えたことや聞こえたことをそのまま記録することが大切です。

そして「C(結果)」では、行動が起きた後に何が起こったか、周囲の反応はどうだったかを観察します。例えば、親が叱った、欲しいものが手に入った、活動を中断できた、周囲の注目が集まった、親が諦めて要求を受け入れたなど、行動の結果としてお子さんや周囲にどのような影響があったかを記録します。

このABC分析を継続的に行うことで、特定の先行条件が特定の行動を引き起こし、その行動が特定の結果によって強化されているパターンが見えてくることがあります。このパターンを理解することで、親御さんは問題行動が起きやすい状況を事前に避けたり、問題行動が起きた後の対応を変えることで、不適切な行動の頻度を減らすための具体的な対策を立てられるようになります。行動の背景にあるメッセージを読み解き、より効果的な介入へと繋げるための第一歩となるでしょう。


環境調整によるアプローチ

ペアレントトレーニングにおける「環境調整」とは、お子さんの望ましい行動を促し、不適切な行動を減らすために、周囲の物理的・社会的環境を意図的に整えることです。お子さんの行動は、その子の特性だけでなく、周りの環境からも大きな影響を受けます。そのため、お子さんの特性に合わせて環境を調整することは、行動の変化を促す上で非常に効果的なアプローチとなります。

物理的な環境調整としては、例えば刺激の軽減が挙げられます。音に敏感なお子さんであれば、静かな場所で過ごせるスペースを確保したり、ヘッドホンを利用させたりする工夫があります。また、光に過敏な場合には、照明の明るさを調整することも有効です。

さらに、片付けが苦手なお子さんには、おもちゃの収納場所を明確にし、写真やイラストで表示するなど、視覚的にわかりやすい工夫を凝らすことが望ましいでしょう。一日のスケジュールを絵カードで見せることで、お子さんは見通しが立ちやすくなり、それによって不安を軽減できる場合があります。衝動性の高いお子さんや、特定の危険な行動が見られるお子さんの安全を確保するためには、触れてほしくないものや危険なものを手の届かない場所に置いたり、安全対策を施したりすることも大切です。

社会的な環境調整としては、親御さんやお子さんを取り巻く人々との関わり方を見直すことが含まれます。家族全員で、お子さんへの対応方針を共有し、一貫した態度で接することで、お子さんは「どうすれば良いか」を理解しやすくなります。家庭内のルールを具体的に、かつ簡潔に伝え、ルール表などの視覚的な情報を活用することも有効です。お子さんにいくつかの選択肢を与えることで、自分で決める機会を提供し、自主性を育むと共に、親御さんへの反発を減らすことにも繋がります。

環境調整は、お子さんが自分の能力を最大限に発揮し、安心して過ごせるようにするための土台作りです。親御さんがお子さんの特性を深く理解し、それに合わせた環境を整えることで、お子さんは不必要なストレスから解放され、より前向きな行動へと向かうことができるでしょう。


行動の3つのタイプ

お子さんの行動を理解する上で、ペアレントトレーニングでは、行動を「好子出現による行動の増加」「嫌子除去による行動の増加」「好子消失・嫌子出現による行動の減少」という3つのタイプに分けて捉えることがあります。これは、お子さんの行動がどのような結果によって増えたり減ったりするのかを理解するための基本的な考え方です。お子さんの行動の背景にあるメカニズムを知ることで、親御さんはより効果的な関わり方を実践できるようになります。

まず、「好子出現による行動の増加」とは、お子さんがある行動をした後に、お子さんにとって嬉しいこと(好子)が与えられた結果、その行動が将来増えることを指します。例えば、お子さんがお手伝いをした後に「ありがとう、助かったよ」と褒められたり、好きなおやつがもらえたりすることで、次もお手伝いをしようとする気持ちが高まる場合です。この場合、親御さんのポジティブな声かけや報酬が「好子」として機能し、お手伝いという行動を増やしていることになります。

次に、「嫌子除去による行動の増加」とは、お子さんがある行動をした結果、お子さんにとって嫌なこと(嫌子)が取り除かれたことで、その行動が将来増えることを言います。例えば、宿題が嫌でぐずっていたお子さんが、泣き止んだり宿題に取り組もうとした瞬間に「もうやらなくていいよ」と親御さんが言って宿題を取り下げた場合、お子さんは「ぐずれば嫌なことを避けられる」と学習し、ぐずる行動が増える可能性があります。この場合、宿題が「嫌子」であり、それが除去されることが行動を増やしていることになります。

最後に、「好子消失・嫌子出現による行動の減少」とは、お子さんがある行動をした結果、お子さんにとって嬉しいことが取り去られたり、嫌なことが与えられたりすることで、その行動が将来減ることを意味します。例えば、遊びのルールを破ったお子さんが、しばらくおもちゃを取り上げられたり、叱られたりすることで、ルールを破る行動が減っていく場合がこれにあたります。この理解は、不適切な行動に対してどのように対応すれば良いかを考える上で、非常に重要な視点を提供します。

これらの行動のタイプを理解することで、親御さんはお子さんの行動をより客観的に分析し、望ましい行動はどのように増やし、不適切な行動はどのように減らすかを具体的に計画できるようになるでしょう。


効果的な指示の出し方

お子さんに何かをお願いしたり、新しいことを教えたりする際、親御さんの指示の仕方がお子さんの行動に大きな影響を与えます。特に発達障害のお子さんの場合、指示の出し方を少し工夫するだけで、お子さんの理解度や行動のしやすさが大きく変わることがあります。ペアレントトレーニングでは、お子さんが指示をスムーズに聞き入れ、適切に行動できるようになるための「効果的な指示の仕方」を学びます。

まず、指示を出す際には、お子さんの注意をしっかりと引くことが重要です。お子さんの名前を呼んだり、アイコンタクトを取ったりして、「今からあなたに大切なことを話すよ」というサインを送ります。お子さんが何かに夢中になっている場合は、一度手を止めてこちらに意識を向けてもらうように促しましょう。

次に、指示は「短く」「具体的に」「一つずつ」伝えることを心がけます。一度にたくさんのことを指示したり、抽象的な言葉を使ったりすると、お子さんは何をすれば良いのか混乱してしまいます。「おもちゃを片付けて、手を洗って、座ってご飯を食べなさい」というように複数の指示を連ねるのではなく、「まずはおもちゃを箱に入れようね」と、一つの行動に絞って具体的に伝えます。一つできたら褒めて、次の指示へと進むようにしましょう。

肯定的な言葉を使うことも大切です。「~してはいけない」という禁止の言葉ではなく、「~しようね」「~してください」と、望ましい行動を促す肯定的な言葉を選びます。例えば、「走り回らないで」ではなく「座って歩こうね」といった具合です。
また、視覚的な手がかりを利用することも非常に有効です。言葉での指示だけでは理解が難しいお子さんには、絵カードや写真、身振り手振りなどを加えて視覚的に分かりやすく伝える工夫をします。お子さんと一緒に指示の内容を確認し、指示が実行されたらすぐに褒めることで、お子さんは「指示に従うと良いことがある」と学び、次からの指示にも応じやすくなります。

これらの工夫を凝らすことで、お子さんは指示をより理解しやすくなり、自ら行動しようとする意欲も高まります。親御さんの指示が明確であればあるほど、お子さんも安心して行動できるようになるでしょう。


不適切な行動のへの対処方法

お子さんが不適切な行動を示したとき、親御さんとしてはどのように対応すれば良いのか、頭を悩ませる瞬間は少なくありません。しかし、ペアレントトレーニングを学ぶことで、感情的に反応するのではなく、冷静かつ効果的に対処するための具体的なスキルを身につけることができます。不適切な行動への対処の目的は、その行動を「やめさせる」だけでなく、お子さんが望ましい行動を学べるように導くことにあります。

まず、不適切な行動が起きた際には、親御さん自身が落ち着いて対応することが最も重要です。大声で叱ったり、感情的に怒ったりすることは、かえってお子さんの不安を煽り、行動をエスカレートさせてしまう可能性があります。深呼吸をして、冷静なトーンで対応するように心がけましょう。

次に、問題行動の種類や程度に応じて、いくつかの対処法があります。例えば、軽い不適切な行動であれば、その行動には「注目しない」という方法が有効です。お子さんは、親の注目を得るために不適切な行動をすることがあります。そのような場合、安全が確保されている範囲で、その行動を無視することで、お子さんは「この行動では注目されない」と学習し、行動が減っていくことが期待できます。

しかし、他害や自傷行為、物を壊すなどの危険な行動の場合は、すぐに介入し、行動を止めさせる必要があります。その際には、「タイムアウト」という方法が有効です。タイムアウトとは、お子さんが問題行動を起こした際に、一時的に楽しい活動や場所から離れさせることで、行動の結果として「好ましいもの(注目や楽しい活動など)が失われる」という経験をさせる方法です。例えば、別室で数分間一人で過ごさせる、あるいは壁に向かって静かに座らせるなど、お子さんにとって退屈な状況を作り出します。これは罰を与えることではなく、問題行動によって得られるはずだった報酬(親の注目など)を与えないことで、その行動を減少させることを目的としています。タイムアウトの時間は短く、お子さんの年齢に応じて設定し、時間が終わったら何事もなかったかのように通常の活動に戻すことが大切です。

また、不適切な行動の「事前」に、その行動が起きやすい状況を把握し、環境調整や指示の仕方を工夫することも非常に重要です。そして、不適切な行動を減らすことと同時に、望ましい行動を積極的に褒め、増やす努力を忘れないことが、長期的な視点での解決へと繋がります。お子さんが少しでも望ましい行動を見せたら、すぐに具体的に褒めることで、お子さんは「こうした方が良いんだ」と学び、自信を持って行動できるようになるでしょう。



ペアレントトレーニングを学ぶ

ペアレントトレーニングは、書籍やインターネットの情報だけでも基本的な知識を得ることは可能ですが、実際にそのスキルを習得し、日々の生活で効果的に実践していくためには、専門的なプログラムに参加することが最も確実な方法です。専門家による指導のもと、実践的な演習を通じてスキルを身につけ、個々のお子さんの特性に合わせたアドバイスを受けることができます。また、同じ悩みを持つ他の親御さんと経験を共有することで、孤立感を軽減し、互いに支え合う関係を築くこともできます。

日本国内では、いくつかの機関がペアレントトレーニングの普及と質の向上に取り組んでいます。これらの機関が提供するプログラムや研修に参加することで、親御さんはお子さんへのより良い関わり方を体系的に学ぶことができるでしょう。ご自身の住んでいる地域や、お子さんの年齢、特性に合ったプログラムを探してみることが大切です。

ここでは、特に代表的な二つの団体をご紹介します。これらの情報を参考に、ペアレントトレーニングを学ぶ第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。専門家のサポートを得ながら、お子さんとの新たな関係を築き、子育ての喜びを再発見するための道が開かれるはずです。


日本ペアレントトレーニング子育て支援協会

「日本ペアレントトレーニング子育て支援協会」は、「子どもは変えなくてもいい」を理念に掲げ、ペアレントトレーニングの普及と、発達障害を持つお子さんを育てる親御さんへの支援を目的として活動している団体です。この協会は、科学的根拠に基づいたペアレントトレーニングのプログラムを開発し、その質の維持・向上に努めています。

この協会が提供するプログラムは、親御さんがお子さんの行動をより深く理解し、具体的な対応スキルを身につけることができるように構成されています。ペアレントトレーニングの専門家が講師を務め、グループ形式での学習が中心となります。参加者は、講義を通じて理論を学び、ロールプレイングや意見交換を通じて実践的なスキルを習得していきます。日常生活で直面する具体的なケースについて、LINEのオープンチャットを活用し、専門家からのアドバイスを受けたり、他の参加者と経験を共有したりする機会も豊富に設けられています。

日本ペアレントトレーニング子育て支援協会は、オンラインをメインにしながら全国各地で研修会や講座を開催しており、多くの親御さんが参加できる機会を提供しています。協会のウェブサイトでは、開催情報やプログラム内容の詳細、ペアレントトレーニングに関する基礎知識などが公開されていますので、興味のある方はぜひ一度アクセスしてみてください。この協会を通して学ぶペアレントトレーニングは、お子さんとの関わり方に新たな視点をもたらし、親御さん自身の育児に対する自信と喜びを育むための大きな力となるでしょう。


日本ペアレント・トレーニング研究会

「日本ペアレント・トレーニング研究会」は、ペアレントトレーニングプログラムの開発や普及を通じて、発達障害の子育てに関わる親御さんの支援や専門家の技術向上を後押しするサポートを目指し、国内のペアレントトレーニングの発展に大きく寄与してきた団体です。

研究会では、行動分析学や認知行動療法などの理論に基づき、ペアレントトレーニングのプログラム内容の検討や、ファシリテーター養成研修が行われています。また、専門家向けの研修会や、最新の研究成果を発表する研究大会なども定期的に開催しており、ペアレントトレーニングを実践する専門職の知識と技術の向上にも力を入れています。

日本ペアレント・トレーニング研究会のウェブサイトでは、研究会の活動内容や参考資料などが公開されています。より専門的な知見に触れたい方や、ペアレントトレーニングの方法や背景に興味のある方は、ぜひ一度情報を確認してみることをお勧めします。この研究会の活動は、発達障害を持つお子さんとその家族がより豊かな生活を送るための基盤を強化しています。

また支援者向けに「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」も作成されておりHPから誰でも閲覧が可能です。



まとめ

発達障害を持つお子さんの子育ては、時に困難を伴う道のりですが、ペアレントトレーニングは親御さんにその道標を示してくれます。このトレーニングは、お子さんの行動の背景にある特性を理解し、前向きな変化を促すための具体的なスキルを学ぶものです。お子さんの良い面を見つけて褒めること、行動のきっかけと結果を分析すること、そして環境を整えること。これらコアエレメントを実践することで、お子さんは望ましい行動を増やし、親子の関係性はより穏やかで温かいものへと変わっていくでしょう。

ペアレントトレーニングは、親御さんを責めるものではなく、子育ての自信と喜びを取り戻すための強力なサポートツールです。日本には、専門的に学べる協会や研究会があり、質の高いプログラムが提供されています。ぜひ、一歩踏み出してペアレントトレーニングを学び、お子さんとのより豊かな毎日を築いてください。子育ての悩みは一人で抱え込まず、利用できる支援を積極的に活用することが、ご家族皆さんの笑顔に繋がるはずです。


オススメ記事一覧

1

はじめに 本記事は、社会福祉を学ぶ方向けに、ブースとラウントリーの貧困調査についての要点やキーワードをわかりやすくまとめております。 ブースは汽船会社の実業家として、ラウントリーはチョコレート会社の跡 ...

2

本記事では、F.バイスティックが提唱した「バイスティックの7原則」について、援助関係の本質という視点から、医療・介護・福祉・保育といった対人援助職に従事する方々に向けて、基本から応用までの知識をわかり ...

3

はじめに 本記事では、慈善組織協会(COS)について、イギリスやアメリカにおける歴史展開や社会福祉士国家試験について網羅的な情報をまとめております。 社会福祉を学ぶ方には必見の内容となっております。 ...

4

はじめに 本記事では、「福祉とは何か?」と「福祉の人は誰か?」について考えるというテーマで、福祉に関心のある人に向けたコラムをまとめていきます。 皆さんの中にもきっと「福祉って何だろう?」という問いを ...

5

はじめに 本記事では、ソーシャルワークの理論の起源でもある「診断主義アプローチ」について、専門書を参考文献に要点やキーワードをまとめております。社会福祉士国家試験合格を目指す方や、社会福祉を学ぶ方にと ...

-コラム