コラム

【福祉サービスの組織と経営】社会福祉士国家試験ポイント全まとめ

本記事は、社会福祉士国家試験の科目である「福祉サービスの組織と経営」について、要点やキーワードをわかりやすくまとめております。社会福祉士国家試験合格を目指す人や、福祉サービスの組織運営に関わる人などへ、役立つ情報を提供いたします。

社会学書籍


福祉サービスに係る組織や団体の概要と役割

福祉サービスを提供する組織

社会福祉施設の現状と推移

現代日本の社会福祉施設は「施設から地域へ」という大きな潮流のもと、小規模化・多様化といったより地域に根差した形へ展開されています。高齢者分野では、住み慣れた地域での生活を支える在宅サービスの拡充、障害者分野では、グループホームや就労支援、地域移行をサポートするサービスの新設、児童分野では、放課後デイサービスの増加や、児童養護施設の小規模化、里親委託が進められていると言えます。

社会学書籍

複雑化する個人や地域のニーズに対応しなければならない一方、人材不足やサービスの質の確保が大きな課題となっております。


非営利法人と営利法人

非営利法人は、代表的なものに社会福祉法人と特定非営利活動法人(NPO法人)があります。福祉サービスの中心的な担い手でもあり、社会的な課題解決や共益の追求などを目的としております。事業で利益を上げることは可能でありますが、利益を配当することができない点が営利法人と異なります。

営利法人は、代表的なものに株式会社があります。介護保険制度の導入以降、福祉分野への参入が本格化し、利益追求を目的とした経営が可能です。多様な資金調達や迅速な意思決定、サービス開発力を活かした経営など、サービスの多様化や競争を促進する役割を担っております。

このように、非営利法人は社会福祉法人やNPO法人で利益の配分は不可、営利法人は株式会社で利益の配分も可能という違いを押さえておきましょう。


社会福祉法人

社会福祉法人は、民間の団体でありながら、その役割は極めて公共性の高い存在として、国や自治体が行うべき福祉事業の一部を代わりに担っていると考えると理解しやすいでしょう。

社会学書籍

社会福祉事業において、「第一種社会福祉事業」(主に入所施設)は、利用者の人権や生命に直結するため、安定的で継続的な運営が必要であることからも、原則「国・自治体・社会福祉法人」しか経営が認められていない点で独占性があります。

またその他にも、法人税や事業税などが原則非課税であり、寄付を受けた際も税制上の優遇があります。利益を追求するのではなく、社会福祉のミッションに再投資することを前提としていることが理由です。

2017年には社会福祉法改正に伴い、情報公開の義務化や評議員会を必置とした厳格なガバナンス、地域社会における公益的な取組が責務とされるなど見直しがされました。社会福祉法人は、かつてのような上から事業を任された存在ではなく、自ら地域の課題を発見し、多様な主体と連携しながら地域福祉を創造していく役割がより一層求められております。


NPO法人

特定非営利活動法人(NPO法人)は、市民が主体となって、保健・医療・福祉・まちづくり・環境保全といった特定の非営利活動を行うことを目的とする法人です。

設立に関して、社会福祉法人の「認可」(行政の裁量が大きい)とは異なり、NPO法人の設立は「認証」であるため、法律で定められた要件を満たしていれば所轄庁は原則として認証しなければならない要件主義をとっており、市民が比較的容易に法人格を取得することが可能になります。

社会学書籍

活動分野は「20の分野」が法律上定められており、福祉のみならず環境や国際協力、人権や文化芸術など広いテーマで活動できます。

NPO法人には「認定NPO法人制度」もあり、より公益性が認められると、寄付した個人や法人が税制上の優遇措置を受けられるなどメリットが与えられます。


一般社団法人

一般社団法人は、設立の手軽さと活動の自由さに特徴がある法人で、事業内容も制限がなく公益的な事業や共益的な事業、収益事業も可能です。

NPO法人は10名の社員が必要であったのに対して、一般社団法人は2名の社員がいれば登記して設立ができます。税制上の扱いによって「普通型」(株式会社と同じ課税)と「非営利徹底型」(NPO法人と同じ非課税)の2つのタイプがあり、さらに事業の公益性が認められると「公益社団法人」として税制上の大幅な優遇措置が得られます。


株式会社

株式会社とは、会社法に基づいて設立される営利法人の代表格になります。利益の分配が可能であり、また株式を発行することで広く一般から多額の資金を調達することができます。

福祉においても、介護保険サービス(訪問・通所介護、福祉用具レンタル、有料老人ホームなど)、障害福祉サービス(放課後等デイサービス、就労移行支援など)、保育分野(認可外施設、企業主導型保育事業など)、株式会社の母体で運営されている事業所も多くみられます。

社会福祉法人NPO法人一般社団法人株式会社
設立方法認可
(最も厳しい)
認証
(要件主義)
登記
(2名以上いれば可)
登記
(1名から可)
行政の関与強いありほぼなしほぼなし
事業内容社会福祉事業中心20分野の特定非営利活動原則自由原則自由
非営利/営利剰余金の分配不可剰余金の分配不可剰余金の分配不可配当可能
上位の形態なし認定NPO法人公益社団法人(上場企業など)
第一種社会福祉事業可能原則不可原則不可原則不可
意思決定機関評議員会社員総会社員総会株主総会
キーワード公益性・安定性
認可・第一種
市民性・柔軟性
認証・20分野
自由度・共益性
登記のみ
営利性・資金力
配当・株主

法人格を有しない団体

営利や非営利法人は、上記の他、医療法人や学校法人、財団法人など数多くの形態があります。

また、法人格を有しない団体も福祉には欠かせない役割を担っており、「ボランティア団体」、「住民組織(町内会・老人クラブ)」、「当事者会・家族会」、「サロン活動」など、視点を広げると多くの方々が、それぞれの範囲で福祉を支えております。

社会福祉士は、これらの社会資源を広く把握し、連携や支援を行っていく役割が今後益々求められます。


協働組合

協働組合は、共通の目的を持つ人々が自発的に集まり、出資し、協同で事業を運営し、それを利用することによって、メンバー(組合員)の生活や事業を向上させることを目的とした非営利の相互扶助組織です。

福祉との関連では、「生活協同組合(生協・CO-OP)」や「労働者協同組合(ワーカーズコープ)」が身近な例として挙げられます。

また、協同組合は社会福祉の歴史でもとても重要であり、下記記事でも紹介しておりますので、良かったらご覧ください。

ロッチデールの原則~協同組合のはじまり - SOCIAL CONNECTION



福祉サービスの沿革と概況

福祉サービスの歴史

第二次世界大戦後から2000年頃までは、大きく「措置の時代」として特徴づけられます。

福祉サービスの担い手は国、地方公共団体、社会福祉法人に限定されておりましたが、高齢化の進行に伴い、福祉ニーズの増大や多様化という課題が出てきます。そこで、民間の活用(多様な供給主体)が提言され、福祉分野にも効率性や競争原理の導入なども議論されていきます。

戦後の福祉立法の流れに関しては、下記記事にまとめておりますので紹介になります。

福祉三法と福祉六法のキーワード解説[戦後福祉立法の流れ] - SOCIAL CONNECTION

措置制度についてはこちらのスライドをご覧ください。

福祉の措置|社会福祉士国家試験道場 - SOCIAL CONNECTION


社会福祉基礎構造改革

社会福祉基礎構造改革は、社会福祉事業法が2000年に社会福祉法に改正されることを中心とした一連の改革を指します。

スローガンは「措置から契約へ」という理念のもと抜本的な改革が行われていきます。

背景としては、「少子高齢化」や「福祉ニーズの多様化」、「措置制度の課題」など挙げられ、利用者本位の理念のもと、「契約制度(サービスを受ける利用者が契約)」が導入されます。

またサービス供給主体も、社会福祉法人のみならず、NPO法人や営利企業など、多様な事業者の参入を促進し、競争原理のもとサービスの質の向上が期待されました。福祉サービスの質を確保するために、第三者評価事業や苦情解決の仕組みも法制化されていきます。


公益法人制度改革

公益法人制度改革は、2008年に施行され、法人の「公益性」や「ガバナンス」に影響を与えた改革のことを指します。

それまで各省庁が最良で公益法人を許可していた制度を改め、法人の設立や公益性の判断を透明化・簡素化することが目的となります。

具体的には「設立と公益認定の分離」として、一般社団や財団法人は公益性がなくても登記のみで設立(準則主義)できるようになり、その上で第三者委員会から公益認定を受けると「公益社団・財団法人」となる仕組みができました。

この改革により、「公益性とは何か」、「法人の透明性やガバナンスの在り方」が議論されるようになり、後に社会福祉法人制度改革へつながる流れになります。


社会福祉法人制度改革

社会福祉法人制度改革は、一部の社会福祉法人で発生した不祥事や同族経営によるガバナンスの不全、多額の内部留保などの課題に対して、以下4つの柱をもとに大きな改革を行いました。

①経営組織のガバナンス強化」として、理事会への牽制機能も兼ねて、すべての社会福祉法人に評議員会の設置が義務化されます。

②事業運営の透明性の向上」として、財務諸表等の公表が義務化されるなど、事業の透明性の確保の動きが強まります。

③財務規律の強化」として、一定以上の利益(内部留保)がある法人はその使途について、「社会福祉充実計画」を作成し、所轄庁の承認を得て公表・実行することが義務づけられました。

④地域における公益的な取組の実施責務」として、高い公共性から「無料または低額な料金で福祉サービスを提供」など、地域社会に貢献する取り組みの責務があることが法律にも明記されます。

このように、2000年より社会福祉に関する一連の改革が進められてきました。

社会福祉基礎構造改革・措置から契約へ (行政主導から利用者主体)
・背景:少子高齢化、福祉ニーズの多様化、措置制度の課題
・多様なサービス供給主体(NPO法人や営利企業)
公益法人制度改革・一般社団法人、財団法人は、公益性がなくても登記のみで設立可能(準則主義)
・公益社団法人、公益財団法人は、第三者委員会から公益認定を受ける必要あり
・公益性や法人の透明化、ガバナンスが議論されるようになる
社会福祉法人制度改革・社会福祉法人の不祥事やガバナンスの不全、内部留保などへの対応
・評議員会の必置 
・財務諸表の公表化
・内部留保がある法人は、社会福祉充実計画の作成が必要
・地域における公益的な取組(無料または低額でのサービス)


組織間連携と促進

公益的活動の推進

公益的活動の推進にあたって、2017年の改正により「地域における公益的な取組」を行うことが社会福祉法人の責務として明確に位置づけられました。

これは税制上の優遇など高い公益性に見合った社会貢献が求められることや、既存の公的制度だけでは対応できない制度の狭間にあるニーズに応える必要性が高まったことが背景にあります。

社会福祉法人が持つ専門性や資源を活かした自主的な取り組みや、その際に生まれる地域や多機関との接点が、複雑かつ複合的な福祉課題に対応する上で求められております。


多機関協働

多機関協働とは、特定の課題を抱える個人や家族、あるいは特定の地域課題に対して、複数の専門機関が連携して協働することを指します。

単なる連携ではなく「協働」として、複雑で複合的な課題に対し、多機関協働による支援を一体的に展開する実践がより必要性を増しております。お互いが持つ役割や強みを尊重し理解し合う関係性づくりが不可欠です。


地域連携・地域マネジメント

地域連携は、専門機関のみならず地域のあらゆる主体がゆるやかにつながるネットワーク構築を通じて、地域の課題や資源の情報を共有します。お互いの顔が見える関係づくりは、地域福祉にとって欠かせない要素となります。

地域マネジメントは、地域連携によって構築されたネットワークを活かし、地域課題解決を目指す戦略的なプロセスを指します。地域課題や社会資源の発掘、新たなサービスの創出など、資源開発や仕組みづくりとして展開されます。



福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論

組織運営に関する基礎理論

組織運営の基礎

組織運営の基礎では、組織を効果的・効率的に動かし、目標を達成するための理論や手法を学び、社会福祉士に必要な組織運営や質の高いサービス提供のための知識や方法の取得を目指します。

科学的管理法(テイラー)

科学的管理法の背景として、20世紀初頭のアメリカでは産業革命による大規模な工場生産が主流でした。

しかし、当時は経営者が経験や勘に頼って管理しており非効率であったことや、経営者と労働者の間に対立があり、労働者が意図的に作業ペースを落とす組織的怠惰が課題となっておりました。

そこで、テイラーは「科学的手法」を経営管理に導入し改善を試みます。

具体的には、労働者が1日に行うべき標準的な作業量(タスク)を科学的に設定することや、また設定したタスクを達成するために適した労働者を科学的な基準で選び出し訓練や教育を施すこと、設定されたノルマを達成したものには高い賃金を達成できないものには低い賃金を支払う制度の導入など、数々の取り組みを行いました。


管理過程論(ファヨール)

管理過程論は、近代経営管理の父と呼ばれたフランスのファヨールが提唱したアプローチになります。

テイラーが科学的管理法で現場の作業に注目したのに対して、ファヨールは「組織全体のマネジメント」に注目した点が異なります。

ファヨールは企業の活動を「①技術活動」「②商業活動」「③財務活動」「④保全活動」「⑤会計活動」「⑥管理活動」の6つに分類し、その中で特に「⑥管理活動」が軽視されてきたと述べ、その重要性を説いたのです。

また業種や組織の規模に関わらず、全ての組織に共通して存在する普遍的な管理プロセスとして以下の5つの要素を挙げました。

①予測(将来を予測し、行動計画を立てること)

②組織化(計画達成に必要な資源(ヒト・モノ・カネ)を調達し、組織の構造を作ること)

③指揮(組織のメンバーを動かし、業務を遂行させること)

④調整(組織内の全ての活動や努力を調和させ、統一すること)

⑤統制(全ての活動が定められたルールや計画、指示に沿って行われているか監視し評価すること)

このように、「予測→組織化→指揮→調整→統制」という一連の流れがマネジメントの基本的なサイクルであると考えました。


人間関係論(メイヨー)

メイヨーが提唱した人間関係論は、テイラーの科学的管理法が普及し生産性は向上したものの、労働者は単純作業の繰り返しに不満を抱き労働意欲の低下が問題となっていた中、人間はお金だけで動く存在ではなく、「人間の感情や社会的な側面」に焦点を当て、労働意欲の源泉を探ろうとした理論になります。

人間関係論が生まれるきっかけとなった実験が「ホーソン実験」になります。証明を明るくすると生産性が上がったが、暗くしても生産性が上がり続ける結果が出たこと(証明実験)や、他にも少人数の女性グループを対象に休憩時間を導入したり、賃金体制を変えたりと様々な条件を変えて実験するが、どのような条件でも生産性は向上し続ける結果が出る(リレー組立実験)など、予期せぬ発見がありました。

最終的に生産性向上させた要因は照明や賃金といった物理的・経済的条件ではなく、「自分たちが特別な存在として選ばれ、注目されている」という意識や、実験を通して生まれた「仲間意識」、「良好な人間関係」といった心理的・社会的要因であることを提唱しました。

ホーソン実験の結果からメイヨーは、「①モラルの重要性(勤労意欲や士気)」、「②インフォーマル・グループ(職場の仲間内で自然発生的に生まれる人間関係グループ)」、「③コミュニケーションの重要性(経営者や管理者は労働者の不満や意見に耳を傾け良好なコミュニケーションをとること)」、「④新しい人間観の提唱(感情を持ち仲間との関係性を重視する人間像:社会人)」、テイラーの科学的管理法ではない視点に目を向け重要視しました。


リーダーシップ論(PM理論)

PM理論は、日本の社会心理学者である三隅二不二(みすみじゅうじ)が提唱した理論になります。

リーダーシップを個人の素質として捉えるのではなく後天的に学習可能な行動として捉える行動理論の一つで、リーダーの行動は以下の2つの基本的な機能の組み合わせで説明できるとしました。

①P機能(目標達成機能):集団の生産性を高め目標を達成するための行動

②M機能(集団維持機能):集団内の人間関係を良好に保ち、チームワークを維持強化するための行動

三隅は、このP機能とM機能の強弱によってリーダーシップを4つのタイプに分類します。

PM型(P高い、M高い)目標達成能力も高く、チームのまとまりも良い。部下の満足度も生産性も最も高い。(理想)
Pm型(P高い、M低い)仕事の成果は上げるが、部下の配慮に欠け、プレッシャーが強い。短期的に成果は出ても長期的には部下の不満が溜まりやすい。
pM型(p低い、M高い)職場の雰囲気は良いが、仕事の目標達成への意識が低く成果が上がらない。いわゆる仲良しクラブになりがち。
pm型(p低い、m低い)目標達成にも集団維持にも関心がなく、リーダーシップを発揮していない。最も成果が上がらない。

リーダーシップ論(SL理論)

ハーシィとブランチャードが提唱した理論で、唯一絶対な最善なリーダーシップスタイルは存在しない考え方を取り、最適なスタイルはリーダーが直面している「状況」(特に部下の成熟度)によって異なると考えました。

SL理論では、部下の成熟度を「①能力」「②意欲」の2つの軸で判断し、組み合わせで部下の成熟度を4つのレベルに分類します。

R1 (能力低い、意欲低い)何をすべきかわからない、自信もない
R2 (能力低い、意欲高い)やる気はあるが、スキルが伴わない状態
R3(能力高い、意欲低い)仕事はできるが自信を失っていたり責任を負うことをためらったりする状態
R4(能力高い、意欲高い)能力もやる気も高く、安心して仕事を任せられる状態

さらに上記の部下の成熟度レベルに合わせて、以下の4つのスタイルを使い分けるべきとしました。リーダーの行動は「①指示的行動」と「②援助的行動」の2軸で定義されます。

S1:教示的スタイル
指示的行動(高)、援助的行動(低)
リーダーが具体的な目標や手順を細かく指示し、部下の行動を綿密に監督する
対象はR1(能力低い、意欲低い)
S2:説得的スタイル
指示的行動(高)、援助的行動(高)
リーダーは指示を出すが、一方的ではなく、目的や理由を説明し部下の意見を聞きながら双方向のコミュニケーションを図る(納得、動機付け)
対象はR2(能力低い、意欲高い)
S3:参加的スタイル
指示的行動(低)、援助的行動(高)
リーダーは日常的な指示はあまり出さず、意思決定のプロセスに部下を参加させる(部下を励まし、支援する)
対象はR3(能力高い、意欲低い)
S4:委任的スタイル
指示的行動(低)、援助的行動(低)
リーダーは、責任と権限の多くを部下に委譲する(部下は自律的に仕事を進めるためあまり関与しない)
対象はR4(能力高い、意欲高い)

リーダーシップ論(サーバント・リーダーシップ)

サーバンド・リーダーシップは、まず最手に奉仕(Serve)したいという気持ちから出発し、その奉仕の結果として人々からリーダーとして認められ導いていくという従来のリーダーシップ像とは逆転の視点をとります。(リーダーである前に、サーバント(奉仕者)であれ)

サーバント・リーダーシップの10の特性は以下になります。

傾聴相手の言葉のみならず、その裏にある想いや感情まで深く聴き取る姿勢
共感相手の立場に立って物事を考え理解しようと努める姿勢
癒し相手の心の傷や挫折感を受け止め、再び立ち上がれるよう支援する
気づき自分自身と周囲の状況を客観的に認識し、深く理解する力
説得権限で強制するのではなく、対話を通じて相手の納得と合意を得る
概念化日々の仕事を超えて、組織が目指すべき大きなビジョンや夢を描く力
先見力・予見力現在の状況から将来起こりうることを予測する力
執事役組織を自分の所有物ではなく「社会の預かりもの」として捉え、次世代のために良い形を引き継ぐ責任感
人々の成長へのコミットメンバー一人ひとりの成長を心から願い、そのための時間や労力を惜しまない
コミュニティづくり組織内に人々が互いに信頼し、支え合えるような温かい共同体を築く

サーバント・リーダーシップのスタイルは「福祉の価値観」と非常に近い側面を持っております。


リーダーシップ論(コンティンジェンシー理論)

コンティンジェンシー理論は「状況適合理論」とも呼ばれ、唯一最善はないという考えから、「状況に応じてリーダーシップのスタイルも変化する」という考え方をとります。

つまり、成功するためには、「状況要因(置かれている環境や条件)」を正しく分析し、それに適合するようなリーダーシップや組織の形を選択する必要があります。先ほどのSL理論や次のパス・ゴール理論はコンティンジェンシー理論の代表例になります。


リーダーシップ論(パス・ゴール理論)

パス・ゴール理論は、リーダーの役割を「①ゴールを明確にする」と「②パスを明確にする」の2点に集約していることに由来したコンティンジェンシー理論になります。

リーダーは「部下の特性」と「環境」という2つの状況要因に応じて以下のリーダーシップスタイルを使い分けます。

指示型リーダーシップリーダーが具体的な指示を与え、何をすべきか、いつまでにすべきかを明確にする
支援型リーダーシップ部下の欲求や福祉に配慮し、友好的で親しみやすい態度をとる、人間関係を重視
参加型リーダーシップ意思決定を行う際に、部下に相談し、提案や意見を十分に考慮する
達成指向型リーダーシップ部下に対して挑戦的で高い目標を設定し、達成を強く促す、部下の能力を最大限に引き出そうとする

組織における意思決定

トップダウン

トップダウンは、組織のトップ層(経営者、理事長、施設長など)が意思決定を行い、その決定事項を上から下へ、つまり現場の職員へ伝達・指示される方式を指します。

メリットとしては、意思決定の迅速化や全体での統一性、強力なリーダーシップの発揮が挙げられますが、一方で職員のモチベーション低下や現場の実情との乖離、現場が持つノウハウや改善案が活かされないといったデメリットもあります。


ボトムアップ

ボトムアップは、現場の職員からの意見、提案、企画などを吸い上げ、それらを基にトップ層が最終的な意思決定を行う方式のことを指します。

メリットとしては、現場の実情に即した意思決定が可能であることや職員のモチベーション向上、多様なアイデアの創出が挙げられる一方で、意思決定に時間がかかることや、全体的な視点の欠如、意思の集約が困難などデメリットもあります。


コンセンサス(合意形成)

コンセンサス(合意形成)は、関係者全員が議論に参加し、全員が納得合意するまで話し合って意思決定を行う方式を指します。注意点として、多数決のように反対意見を押し切るのではなく、反対者の意見も尊重し対話を通じて解決策を探ります。

メリットとしては、合意による決定のため実行段階で協力や一体感が生まれることや、話し合いのプロセスの中でメンバー間の相互理解や信頼関係が深まることなど挙げられます。

一方でデメリットとしては、意思決定に時間が最もかかることや、全員の合意を優先するあまりに革新的な意見ではなく当たり障りのない結論に陥ってしまうこと、同調圧力が生じる可能性など挙げられます。

トップダウン経営層が主体迅速、統一性のメリット現場との乖離やモチベーション低下のデメリット
ボトムダウン現場主体現場の実情、モチベーション向上のメリット時間がかかることや全体的視点の欠如のデメリット
コンセンサス関係者全員高い納得感や一体感が生まれるメリット最も時間がかかることや妥協の産物になってしまうデメリット

それぞれのメリットやデメリットを比較し、唯一絶対の方法はないことを理解した上で状況に応じて使い分けをしたり、組み合わせたりすると効果的です。


問題解決の思考と手順

PDCAサイクル

PDCAサイクルは、品質管理の父と呼ばれるデミングが提唱した、業務の質を継続的に改善していくためのマネジメント手法になります。一度で終わるのではなく、サイクルを回し続けることで螺旋状にレベルアップしていくイメージです。

各ステップは、「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(評価)」→「Action(改善)」の手順で進んでいきます。

Plan(計画)解決する課題や目標を設定し、具体的な行動計画を立てるステップ
Do(実行)立てた計画を実際に実行に移すステップ
Check(評価)実行した結果が計画通りに進んでいるか、目標に対してどのような効果があったかを客観的に評価・分析するステップ
Action(改善)評価の結果に基づき、次の行動を決定するステップ

SWOT分析

SWOT分析(スウォット分析)は、組織の経営戦略や事業計画を立てる際に、自らの組織を取り巻く状況を整理・分析するためのフレームワークになります。「内部環境」「外部環境」の両面から、プラスの要素(強み)とマイナスの要素(弱み)を洗い出します。

Strengths(強み)内部環境組織が持つ長所や得意なこと、他にはない資源
Weaknesses(弱み)内部環境組織が持つ短所や不得意なこと、不足している資源
Opprtunities(機会)外部環境組織にとって追い風となる社会の変化や市場の動き
Threats(脅威)外部環境組織にとって向かい風となる社会の変化や市場の動き

モチベーションと組織の活性化

欲求段階説(マズロー)

欲求段階説は、人間性心理学を生み出した一人であるマズローが提唱した理論で、人間の欲求は生まれながら備わっており、低次の欲求が満たされると、その上の高次の欲求を求めるようになるという性質を持つとしました。

①生理的欲求」、「②安全の欲求」、「③社会的欲求(所属と愛の欲求)」、「④承認の欲求」、「⑤自己実現の欲求」の5段階を低次から高次への欲求の段階としました。

①生理的欲求生命を維持するための最も根源的な欲求(食事・睡眠など)
②安全の欲求身体的・経済的な危機から逃れ安定的で予測可能な状態を維持したい欲求
③社会的欲求(所属と愛の欲求)集団に所属し、仲間として受け入れられたい、孤独を避けたいという欲求
④承認の欲求他者から尊敬されたい、認められたい、価値ある存在だと思われたいという欲求
⑤自己実現の欲求自分が持つ能力や可能性を最大限発揮し、あるべき自分になりたいと願う欲求

動機づけ・衛生理論(ハーズバーグ)

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論(二要因理論)は、仕事における「満足」をもたらす要因と、「不満足」をもたらす要因は全く別の次元であることを発見し提唱した理論になります。

衛生要因は、労働条件や給与、人間関係など、主に環境に関する要因で、これらが満たされないと「不満足」につながる要因のことを指します。しかし、仮に衛生要因が満たされていても、満足度やモチベーションの向上にはつながらないとしたのがこの理論の特徴になります。

動機づけ要因は、達成感や承認、成長ややりがいなど、これらが満たされると、人は仕事に「満足」を感じ意欲が高まる内発的な要素を指します。しかし、仮に動機づけ要因が満たされなくても不満とはなりません。

衛生要因(環境)不満足につながる要素(労働条件・給与・人間関係など)
動機づけ要因(内発的)満足につながる要素(達成感や承認、成長ややりがいなど)

XY理論(マクレガー)

マクレガーのXY理論は、経営者や管理者が部下に対して抱く人間観には、根本的に2つのタイプ(性悪説的・性善説的)があるとし、どちらの人間観を持つかによって自己成熟的予言として、結果その見方通りになってしまうという考え方を示しました。

X理論(性悪説的な人間観)は、「人間は生まれつき仕事が嫌いである」や「責任を回避したいと望む」、「目標達成のためには強制・命令・脅迫(アメとムチ)・統制で管理しなければならない」とした人間観をもとに、命令と統制を中心とした「権威主義的な管理」を指します。

Y理論(性善説的な人間観)は、「人間は遊びと同じく仕事にも心身を捧げる」、「自ら設定した目標に対して自ら進んで努力する(自己統制)」、「条件次第では自ら進んで責任をとろうとする」、「多くの人が高い創造性や創意工夫の能力を持っている」とした人間観のもと、「機会の提供と目標による管理」を掲げ、自主性を尊重する考え方をとります。

マクレガーは、これからの時代はY理論に基づく管理が必要であると主張しました。

X理論(性悪説的な人間観)命令と統制を中心とした「権威主義的な管理」 ※アメとムチ
Y理論(性善説的な人間観)自主性を尊重する考え方のもと「機会の提供と目標による管理」


チームに関する基礎理論

チームアプローチ

福祉サービスは、一人の専門職が単独で完結させることはほぼ不可能であり、多職種が連携・協働するチームアプローチが基本になります。

チームアプローチは、ある共通の目標を達成するために、異なる専門性や役割を持つメンバーが、互いに連携・協働しながらアプローチする方法のことを指します。


集団力学

集団力学(グループ・ダイナミクス)は、社会心理学者のレヴィンが提唱した概念で、集団の中でメンバー間の相互作用によって生じる「目には見えない力」の働きや、集団全体の変化や発展のプロセスを研究する分野を指します。

全体は、部分の総和以上のもの」とし、1+1が2ではなく、3や4にもなる「相乗効果(シナジー)」に注目した考え方になります。

集団力学は、リーダーシップやメンバーの凝集性、コミュニケーションや意思決定、葛藤などの分野を取り扱います。


チームの発達段階モデル

タックマンは、チームが形成されてから成果を出すようになるまで、「①形成期」、「②混乱期」、「③統一期」、「④機能期」、「⑤散会期」の5つの段階を経るとしたチームの発達段階モデル(タックマン・モデル)を提唱しました。

①形成期メンバーが集まったばかりの段階(探り合い、緊張感、リーダーに依存しがち)
②混乱期意見の対立や葛藤が表面化する段階(目標や役割分担を巡って議論)
③統一期チームとしてルールや規範、役割分担が確立される段階(相互理解が深まり一体感が生まれる)
④機能期チームが最も成熟し効果的に機能する段階(自律的に行動、共通の目標に向かってエネルギーが集中)
⑤散会期プロジェクト終了などチームが解散する段階

チームの機能と構成

効果的なチームを意図的に作るためには、機能と構成要素を理解する必要があります。

チームの機能は、チームが効果的に機能するために必要な要素を指し、「目標設定機能」、「課題遂行機能」、「チームの維持機能」、「評価・修正機能」など挙げられます。(例:PM理論)

チームの構成はメンバーシップとして、「チームのサイズ」、「メンバーの多様性」、「役割」など、どのようなメンバーでチームを構成するかに着目します。

チームのサイズでは、大きすぎると社会的手抜きが生まれ、小さすぎるとアイデアの偏りが生まれることが考えられます。またメンバーの多様性では、多様な視点から問題を検討することで創造的な解決策が生み出しやすいメリットがある一方、価値観の違いから葛藤が生まれるデメリットもあります。

このように、福祉現場における支援やカンファレンスなど、様々な理論や視点を踏まえることで、より効果的なチーム作りを目指すことができます。



リーダーシップに関する基礎理論

リーダーシップ

リーダーシップは、組織の目標達成に向けて、メンバーに影響を与え、行動を促す力を指します。

リーダーシップは時代と共に、「特性理論」→「行動理論」→「コンティンジェンシー理論」と変化してきました。

特性理論優れたリーダーは生まれながらにして特別な資質や特性を持っている
行動理論リーダーの資質ではなく、行動を重視する
コンティンジェンシー理論状況に応じて、最適なリーダーシップは変化する

フォロワーシップ

フォロワーシップとは、組織の目標達成のために、リーダーを主体的に保佐し、自律的に貢献しようとする姿勢や能力のことを指します。いくら優れたリーダーがいても、メンバー(フォロワー)が指示待ちや批判ばかりでは組織は機能しません。

フォロワーシップの理論として、ロバート・ケリーによる5つのタイプがあります。ケリーはフォロワーを2つの軸(①建設的・批判的思考②積極的関与)で分類を図りました。

模範型フォロワー自ら考え、建設的な批判も行い、積極的に組織に貢献する
順応型フォロワー批判的思考は苦手だが、積極的に関与し、リーダーに従う(イエスマン)
孤立型フォロワー批判的だが、組織の関与は消極的(冷笑的でチームの和を乱す)
消極型フォロワー思考も関与も消極的(指示されたことしかしない指示待ちタイプ)
実務型フォロワーバランスはとれているが現状維持を好み、リスクはとらないタイプ

このように、リーダーシップとフォロワーシップは車の両輪の関係があり、どちらも欠かせない要素となります。


リーダーの機能と役割

リーダーの機能は、前述のPM理論が示す「目標達成機能(P機能)」と「集団維持機能(M機能)」の2つが基本となります。

PM型(P高い、M高い)目標達成能力も高く、チームのまとまりも良い。部下の満足度も生産性も最も高い。(理想)
Pm型(P高い、M低い)仕事の成果は上げるが、部下の配慮に欠け、プレッシャーが強い。短期的に成果は出ても長期的には部下の不満が溜まりやすい。
pM型(p低い、M高い)職場の雰囲気は良いが、仕事の目標達成への意識が低く成果が上がらない。いわゆる仲良しクラブになりがち。
pm型(p低い、m低い)目標達成にも集団維持にも関心がなく、リーダーシップを発揮していない。最も成果が上がらない。

また、リーダーの役割では、ミンツバーグの役割論というものがあります。ミンツバーグは経営者(リーダー)の仕事を観察し、その役割を大きく3つ、具体的に10個に分類しました。

対人関係(フィギュアヘッド:象徴)組織の顔として、式典や会議などに出席する
対人関係(リーダー)部下を動機づけ、指導・育成する
対人関係(リエゾン:連絡・渉外)外部の関係者とネットワークを築く
情報関係(モニター)常に内外の情報を収集する
情報関係(ディセミネーター:伝達者)収集した情報を組織内に伝達する
情報関係(スポークスマン)組織の代表として、外部に情報を発信する
意思決定(起業家)新しい事業や改善の機会を探し、実行する
意思決定(妨害処理者)予期せぬトラブルや危機に対応する
意思決定(資源配分者)人・モノ・金・情報といった資源を分配する
意思決定(交渉者)外部組織や職員と交渉を行う

福祉サービス提供組織の経営と実際

経営体制

理事会・評議会等の役割

理事会は、法人の業務執行に関する方針を決定する機関であり、理事長や理事の選定や解職、職務執行の監督などの役割を担います。

評議員会は理事会の牽制機能を持ちながら、法人運営の根幹に関わる重要事項を議決する役割を担います。理事や親族は評議員になることはできず第三者的な立場から法人運営を監督する仕組みになっております。

理事会業務執行の意思決定機関
評議員会
(理事やその親族はなれない)
運営を監督する議決機関

経営戦略・事業計画

経営戦略とは、法人の理念やビジョンに基づき、社会の変化やニーズを見据えながら中長期的にどのような方向へ進んでいくのかを定めるものになります。

事業計画は、経営戦略という羅針盤が指し示す目的地へ到達するための、具体的な航海図のような役割を指します。経営戦略を達成するために、年度ごと「どのような事業を」、「どのような方法で」、「どれくらいの予算で」実施するか具体的に決めます。


マーケティング

福祉分野におけるマーケティングは、単なる営利目的の宣伝活動ではなく、利用者や地域のニーズを的確に把握し、そのニーズに応えるサービスを創造し、必要な人々に届けるための一連の活動を指します。


福祉サービス提供組織のコンプライアンスとガバナンス

社会的ルールの遵守

福祉サービス提供組織にとって、コンプライアンスとガバナンスは、組織の信頼性を担保し、質の高いサービスを提供し続ける根幹をなすものです。これらは単なる義務ではなく、利用者や地域社会からの信頼を獲得し、法人の価値を高めるための重要な経営課題になります。

社会的ルールには、福祉に関連する法律(社会福祉法や介護保険法etc)、個人情報保護法、労働基準法、虐待防止法など、様々な法律や条例の他、倫理綱領や法人の定款・諸規定、社会的良識や倫理といった広範囲なルールを含みます。


説明責任の遂行

説明責任は、とりわけ社会福祉法人のような補助金や税制上の優遇措置を受けている組織や活動は、国民からの信託に基づいているため、自ら活動内容や財務状況について、利用者や地域住民、行政などの多様な利害関係者に説明する責任があります。


業務管理体制・内部管理体制の整備

業務管理体制の整備は、介護保険法などに基づき法令等を遵守するために事業者に義務付けられている体制を指します。

内部管理体制の整備は、社会福祉法に基づき、理事の職務執行が法令・定款に適合し、その他業務の適正を確保するための体制を指します。(リスク管理体制や、理事会による監督、監事による監査etc)


権限委譲と責任のルール化

権限委譲は、効率的かつ迅速な組織運営を行う上で有効となります。理事長や施設長が持つ業務上の権限の一部を、現場の職員などに委譲することが該当されます。その際には、手順や仕組みを組織化することが大切です。



福祉サービス提供組織の経営と実際

適切な福祉サービスの管理

品質マネジメントシステム

組織が提供するサービスの品質を、継続的に改善していくための組織的な仕組み(システム)のことです。一度きりの改善活動ではなく、組織全体で品質向上に取り組むためのルールや手順、体制を指します。

例)「食事介助」という業務において、誤嚥防止のための手順をマニュアル化し(文書化)、全職員に研修を実施する(記録)。定期的に、マニュアル通りに介助が行われているか、スーパーバイザーがチェックする(内部監査)。これが品質マネジメントシステムの一例です。


PDCAとSDCA管理サイクル

品質マネジメントを実践するための具体的な手法(フレームワーク)です。この2つを両輪で回すことで、サービスの質を「向上」させ、かつ「安定」させることができます。

PDCAサイクル
(改善のサイクル)
P (Plan): 計画課題を見つけ、目標設定と改善計画を立てる
D (Do): 実行計画に沿って試してみる
C (Check): 評価実行した結果を評価・分析する
A (Action): 改善評価結果をもとに、本格導入するか、計画を練り直すかを決める
SDCAサイクル
(維持・標準化のサイクル)
S (Standardize): 標準化PDCAで改善された良いやり方をマニュアル化し、標準的な業務手順とする
D (Do): 実行標準化された手順通りに業務を行う
C (Check): 評価手順通りに行われているか、品質が維持されているかを確認する
A (Action): 処置手順から逸脱していれば、元に戻すよう是正する

リスクマネジメント体制

事業運営に伴う様々なリスク(事故、災害、感染症、情報漏洩、職員の不正など)を組織的に管理し、リスクの発生を予防し、万一発生した場合の損害を最小限に抑えるための体制です。

リスクマネジメント具体例
ヒヤリハット報告
(インシデントレポート)
重大事故には至らなかったが「ヒヤリ」「ハッ」とした事例を報告・共有し、分析することで重大事故を未然に防ぐ取り組み。
BCP(Business Continuity Plan)
事業継続計画)
地震や水害、パンデミック等の緊急事態が発生した際に、中核となる事業(利用者の生命を守るケアなど)を中断させない、または早期に復旧させるための計画。安否確認方法、代替施設の確保、備蓄などが含まれます。
コンプライアンス(法令遵守)法律や規則、倫理規範を守るための体制構築。

権利擁護制度と苦情解決体制

利用者の権利を守り、サービスへの不満や意見を表明する機会を保障し、それを組織のサービス改善につなげるための仕組みです。

具体例とキーワード
苦情解決体制
(事業者に設置義務あり)
・苦情解決体制(社会福祉法第82条): 社会福祉事業者に設置が義務付けられている仕組み。
・苦情解決責任者: 事業所の長(施設長など)。
・苦情受付担当者: 利用者が相談しやすい職員(現場の主任など)。
・第三者委員: 事業所と利害関係のない外部の専門家(弁護士、大学教員など)。公平性・中立性を保ち、利用者が直接相談することも可能。
運営適正化委員会
(都道府県社会福祉協議会に設置)
事業者の苦情解決体制で解決しなかった場合に、相談・助言・調査・あっせんを行う中立機関。
成年後見制度判断能力が不十分な人の財産管理や身上保護を行い、契約などの法律行為を支援することで権利を擁護する制度。

福祉サービスの質と評価

提供しているサービスの質を客観的に評価し、その結果を公表・活用することで、サービスの質の向上と利用者の適切なサービス選択を支援する取り組みです。

評価の3つの視点
(ドナベディアン・モデル)
① 構造(ストラクチャー)評価サービスの提供基盤
(例: 職員の配置数や専門性、施設の広さや設備、マニュアルの有無)
② 過程(プロセス)評価サービス提供の具体的な流れ
(例: 個別支援計画が適切に作成・実施されているか、利用者とのコミュニケーションは十分か)
③ 結果(アウトカム)評価:サービスによってもたらされた成果や変化
(例: 利用者のADL(日常生活動作)の改善度、QOL(生活の質)の向上、本人・家族の満足度)
福祉サービス第三者評価事業
目的①事業者のサービス質の向上、②利用者への情報提供。
評価機関都道府県が認証した中立的な評価機関が実施。
評価方法書面調査や訪問調査(職員・利用者へのインタビューなど)を行う。
結果の公表原則として公表され、WAM NETなどで閲覧できる。
受審基本的に事業者の任意だが、一部の事業では義務・推奨されている。

情報管理

個人情報保護法

個人のプライバシーや権利利益を守ることを目的とした法律です。福祉サービス事業者は、利用者の病歴、家族構成、経済状況など、極めて機微な個人情報を取り扱うため、この法律の遵守は絶対的な義務となります。


公益通報者保護法

組織内部の不正行為(法令違反)を、そこで働く労働者が通報(内部告発)したことを理由に、解雇や減給などの不利益な取扱いをされることから保護するための法律です。これにより、事業者の自浄作用を促し、コンプライアンス経営を強化することが目的です。


情報公開・パブリックリレーションズ

情報公開は、組織が保有する情報を原則として公開し、運営の透明性(Transparency)を高め、社会に対する説明責任(Accountability)を果たすための取り組みです。

パブリックリレーションズは、組織とそれを取り巻く利害関係者(ステークホルダー:利用者、家族、地域住民、行政、ボランティア、職員など)との間で、双方向のコミュニケーションを通じて良好な関係を築き、維持していく活動全般を指します。

例)ウェブサイトやSNSでの日々の活動報告、広報誌、地域住民向けの講座やカフェの開催、見学会やお祭り等のイベント

これらの情報管理に関する取り組みは、単なる事務作業ではなく、組織の信頼を築き、利用者の権利を守り、地域に開かれた健全な経営を行うための根幹であると理解しておきましょう。



会計管理と財務管理

財務諸表の理解・財務規律の強化

財務諸表とは、組織の財産状況や経営成績をまとめた「決算書」のことです。これを読み解くことで、その組織が健全に運営されているかを判断できます。

貸借対照表ある特定の時点(決算日)における、法人の財政状態(財産や借金の状況)を示します。
資金収支計算書会計年度1年間における、すべての現金の収入と支出の流れを示します。いわば「法人版の家計簿」です。
事業活動計算書会計年度1年間における、法人の経営成績(儲けが出たか)を示します。一般企業の「損益計算書(P/L)」に相当します。

自主財源・寄付金・各種制度に基づく報酬

法人の収入(財源)には様々な種類があります。

★各種制度に基づく報酬: 法人運営の柱となる財源です。
介護報酬: 介護保険制度に基づくサービスの対価。
障害福祉サービス等報酬: 障害者総合支援法に基づくサービスの対価。
措置費・委託費: 児童福祉施設や救護施設などで、行政との契約(措置・委託)に基づき支払われる費用。

寄付金: 個人や企業から受け取る寄付。税制上の優遇措置(寄付金控除など)があります。

★自主財源:
共同募金配分金: 赤い羽根共同募金などから配分される資金。
補助金・助成金: 国や自治体、民間財団から特定の事業に対して交付される資金。
自主事業収入: 収益事業(例: 貸しビル経営、駐車場の運営など)から得られる収入。


資金調達・ファンドレイジング

事業を行うために必要なお金(資金)を集める活動のことです。特に、寄付や助成金など、市場原理に基づかない資金を集める活動をファンドレイジングと呼びます。

ファンドレイジングの手法
寄付一般個人や法人を対象に、寄付を呼びかける活動。
会費NPO法人などで、活動に賛同する会員から集める会費。
助成金・補助金の申請民間財団や行政のプログラムに応募し、資金を獲得する。
クラウドファンディングインターネットを通じて、不特定多数の人から少額ずつ資金を調達する手法。近年、注目度が高まっています。
遺贈寄付亡くなった方の遺産の一部を寄付してもらうこと。

資金運用・利益管理

● 資金運用
目的: 法人の財産を安全かつ確実に管理・運用すること。
基本原則: 社会福祉法人は公益性が高いため、投機的な運用は認められません。安全性と確実性が最優先されます。
具体的な運用先: 主に預貯金や国債、地方債などの元本が保証された確実な金融商品に限定されます。

● 利益管理
非営利性の原則: 社会福祉法人やNPO法人は非営利法人です。これは「利益を出してはいけない」という意味ではなく、「利益を分配してはいけない」という意味です。
利益の使途: 事業活動によって生じた利益(剰余金)は、役員や出資者に配当することはできません。
利益の再投資: 生じた利益は、職員の処遇改善、サービスの質の向上、施設の修繕、新たな福祉事業の開始など、法人の本来の目的に再投資しなければなりません。

これらの会計・財務に関する知識は、組織の健全性や透明性を判断する上で不可欠です。特に財務諸表3点セットの名称と意味、そして非営利法人の利益の扱いは頻出なので、しっかり押さえておきましょう。


福祉人材のマネジメント

福祉人材の育成

OJT・OFF-JT・SDS

OJTは職場内訓練のことを指します。実際の業務(仕事)を通じて、上司や先輩職員が部下や後輩職員に必要な知識・技術・態度を指導・育成する計画的な教育訓練です。

OFFーJTは職場外訓練のことで、職場や通常の業務から離れて行われる集合研修やセミナー、講習会などを指します。

SDSは、自己啓発援助制度のことを指します。。職員が自発的に行う学習(資格取得、通信教育、読書、外部セミナーへの参加など)に対して、組織が費用補助や情報提供、学習時間の確保などの支援を行う制度です。


職能別研修と階層別研修

職能別研修は、それぞれの専門職に求められる専門的な知識技術の向上を目的とし、職種や専門性に応じた行われる研修のことを指します。

階層別研修は、新人や中堅、リーダーや主任など、それぞれの階層で求められる役割や能力の取得を目的とする役職や職位(階層)に応じて行われる研修を指します。


スーパービジョン体制

経験の豊かな専門職(スーパーバイザー)が、経験の浅い専門職(スーパーバイジー)に対して、その専門的実践の質を保証し向上させるために、継続的に行う教育的な関わりのことです。OJTの最も専門的で体系的な形と捉えることができます。

スーパービジョンの3つの機能
管理的機能スーパーバイジーが所属機関の方針やルールに沿って、適切に業務を遂行しているかを確認・管理する機能。(例: 業務量の調整、法令遵守の確認、適切な記録の指導)
教育的機能スーパーバイジーが専門職として成長するために、知識・技術・価値を教え、実践能力を高める機能。(例: 面接技法の指導、アセスメント視点の提供、理論の解説)
支持的機能スーパーバイジーが業務で抱えるストレスや不安を受け止め、精神的に支えることで、燃え尽き症候群(バーンアウト)を防ぎ、モチベーションを維持する機能。(例: 悩みを聞く、共感的に関わる、感情の表現を促す)

スーパーバイザーとスーパーバイジーは、評価をする・されるという関係性だけでなく、信頼関係に基づいた対等なパートナーとして、共に成長していく関係(協働関係)であることが重要です。


キャリアパス

キャリアパスは組織内において、職員がどのような仕事や役職を経験し、どのようにスキルアップ・キャリアアップしていくかという「道筋」を具体的に示したものです。

これらの人材育成の仕組みは、職員一人ひとりの成長を支えると同時に、組織全体のサービス品質を向上させ、ひいては利用者の利益に繋がるという視点で理解することが大切です。


福祉人材マネジメント

目標管理制度

目標管理制度(Management by Objectives)とは、職員一人ひとり(またはチーム)が、法人の理念や事業計画に沿った具体的な目標を自ら設定し、その達成に向けて主体的に取り組むことを促す仕組みです。

目的としては、目標達成のプロセスを通じて職員の能力開発の促進や、組織全体の目標達成へとつながる点が挙げられますが、一方で福祉分野では成果を単純な数値で測ることが難しい業務も多い部分を考慮する必要があります。


人事評価システム

人事評価システムとは、職員の能力・業績・情意(勤務態度)などを、一定の基準に基づいて評価し、その後の処遇や育成に結びつける仕組みです。評価の透明性、公平性、納得性が極めて重要になります。

人事評価を行う上では、評価者と被評価者の人間関係が、評価に影響してしまうリスクを考慮する点や、評価者の主観によるブレを軽減するための評価基準や研修を設けることが大切になります。


報酬システム

報酬システムとは、職員の働きや貢献に対して、給与や賞与といった金銭的な報酬を決定し、支給するための一連の体系です。職員の生活を支え、モチベーションを維持する上で根幹となる制度です。

一般的には、職能給や職務給、役職給などが主な体系として導入されております。

福祉人材マネジメントにおいて、「目標管理」「人事評価」「報酬」は三位一体です。「法人の理念」という屋根の下、これら3つの柱がしっかりと連動することで、組織は機能します。


働きやすい労働環境の整備

労働三法及び労働関係法令

職員を守る最も基本的なルールが、労働関係法令です。特に重要なのが、①労働基準法、②労働組合法、③労働関係調整法からなる「労働三法」です。これらに加え、労働契約法や労働安全衛生法など、職員の権利と安全を守るための様々な法律が存在します。これらを正しく理解し、遵守することは、組織運営の最低限の義務です。


育児休業・介護休業等

「育児・介護休業法」に基づき、職員が仕事と家庭(育児や家族の介護)を両立できるよう支援する制度です。この法律は、休業の権利を保障するだけでなく、短時間勤務制度、子の看護休暇、介護休暇、時間外労働の制限など、多様な働き方を支える仕組みを定めています。


メンタルヘルス対策

職員の「心の健康」を維持・増進し、いきいきと働ける状態を保つための組織的な取り組みです。2015年からは、労働安全衛生法に基づき、事業者にはストレスチェック制度の実施が義務付けられています(従業員50人未満の事業場は当面努力義務)。


ハラスメント対策

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなど、職場で個人の尊厳を傷つけるあらゆる言動(ハラスメント)を防止するための対策です。改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、事業主にはハラスメント防止措置を講じることが義務化されています。



まとめ

以上が社会福祉士国家試験に関して、福祉サービスの組織と経営のカリキュラム内容に沿った概要説明になります。

社会福祉士は、このように経営に関しての視点を持ち合わせているので、事業所の人材育成の一つとして社会福祉士の国家資格取得を後押しすることをオススメします。

他にも社会福祉士国家試験に関する記事を多数まとめておりますので、良かったらホームページ記事をご回覧ください。

【社会福祉調査の基礎】社会福祉士国家試験のポイント全まとめ - SOCIAL CONNECTION


オススメ記事一覧

1

はじめに 本記事は、社会福祉を学ぶ方向けに、ブースとラウントリーの貧困調査についての要点やキーワードをわかりやすくまとめております。 ブースは汽船会社の実業家として、ラウントリーはチョコレート会社の跡 ...

2

本記事では、F.バイスティックが提唱した「バイスティックの7原則」について、援助関係の本質という視点から、医療・介護・福祉・保育といった対人援助職に従事する方々に向けて、基本から応用までの知識をわかり ...

3

はじめに 本記事では、慈善組織協会(COS)について、イギリスやアメリカにおける歴史展開や社会福祉士国家試験について網羅的な情報をまとめております。 社会福祉を学ぶ方には必見の内容となっております。 ...

4

はじめに 本記事では、「福祉とは何か?」と「福祉の人は誰か?」について考えるというテーマで、福祉に関心のある人に向けたコラムをまとめていきます。 皆さんの中にもきっと「福祉って何だろう?」という問いを ...

5

はじめに 本記事では、ソーシャルワークの理論の起源でもある「診断主義アプローチ」について、専門書を参考文献に要点やキーワードをまとめております。社会福祉士国家試験合格を目指す方や、社会福祉を学ぶ方にと ...

-コラム