社会福祉の歴史

ロッチデールの原則~協同組合のはじまり

ロッチデールの原則~協同組合のはじまり

はじめに

本記事では、協働組合の先駆者であるロッチデールについて要点やキーワードをまとめていきます。

1844年12月、イギリスのランカシャー地方のロッチデールにて、28人の職工が「ロッチデール公正先駆者組合」として小さなお店をはじめたところから、後に現代の協同組合(生協)としてその動きが世界中に広がっていきました。

皆さんにとっても身近な「生協のはじまり」はいったいどのようなものだったのでしょうか?

ロッチデール公正先駆者組合

協同組合の先駆者とも言われ、世界中にその原則や取り組みが広がっていった。

また、本サイトではイギリスの社会福祉の歴史について振り返りを行っております。

社会福祉に関心のある方に向けて、良かったらこちらの記事もご覧ください。

ロッチデール(1844年)以前のイギリスの記事は以下になります。

エリザベス救貧法の成立や特徴について~社会福祉の発展過程を学ぶ - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)

ギルバート法とスピーナムランド制度について~社会福祉の発展過程を学ぶ - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)

新救貧法(1834年)の要点を読み解く~社会福祉の発展過程を学ぶ - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)

どんな方に向けた記事?

・ロッチデールの原則や協同組合の歴史について知りたい。

・将来社会福祉に関わる仕事に就きたい。

・社会福祉について学び自身を成長させたい。

なぜイギリスの歴史?

イギリスは前例がない中で、世界最初の福祉国家を創り上げた。

それでは一緒に確認していきましょう!

ロッチデールのキーワード

はじめに、ロッチデールについて以下キーワードになります。

ロッチデールのキーワード

背景:イギリスの産業革命の裏では、労働者は貧困や失業など生活に苦しんでいた。

・資金集め:週2ペンス積み立て続け、1年がかりで1人1ポンドを集め、お店を開いた。

・ロッチデールの原則:当時の運営規則や精神は世界中に広がっていく。ICA声明へ。

・ジョージ・ヤコブ・ホリヨーク:ロッチデールや協同組合運動を擁護し、執筆活動を通じて世界中に広げた。政治活動家。

・協同組合の先駆者:小さなお店からはじまった取り組みは、現代の協同組合(生協)として世界中へと広がった。

1843年の歳末に、職も食べ物もない者たちが、自分たちの生活向上のために何ができるか集会を開いたところからはじまりました。そして週2ペンスの積み立てを経て、1844年12月に「ロッチデール公正先駆者組合」として小さなお店をはじめました。

メンバーの職業は雑多なもので、羊毛選別工、織物工、製靴工、裁縫士、社会主義者やチャーチストなどで構成されておりました。

やがて、当初28人だった組合員数も10年後には約1400人、資金も28ポンドから1万ポンドを超えるほどの規模になっていきます。

これまで、社会運動や組合運動は度々各地で展開されておりましたが、ロッチデールはそれらの失敗から学びを得て成功へとたどり着いたのです。

ロッチデールの目的

ロッチデールは他とは異なり、明確な実行目的が掲げられておりました。

一口1ポンドの出資金を集め、組合員の金銭的利益や家庭環境の改善を図ることを目的に、以下の実行目的を上げてあります。

ロッチデールの目的(当初)

・食料品、衣類等を売る店舗を設置する。

・多数の住宅を建設または購入し、社会的家庭的状態の改善に協力しようとする組合員の住居にあてる。

・失職した組合員、あるいはひきつづく賃金の引き下げで苦しんでいる組合員に職を与えるため、組合の決議した物品の生産をはじめる。

・さらに、組合員の利益と保障を増進せしめるため、組合は若干の土地を購入、または借入し、失職していたり、労働に対して埠頭な報酬しか得ていない組合員にこれを耕作させる。

・実現が可能になりしだい、本組合は生産、分配、教育および政治の力を備える。換言すれば、共通の利益に基づく自給自足の国内植民地を建設し、または、同様の植民地を創らんとする他の諸組合を援助する。

・禁酒の普及のために、禁酒ホテルを、できるだけすみやかに組合の建物の一つとして開く。

引用:ロッチデールの先駆者たち ジョージ・ヤコブ・ホリヨーク著 財団法人協働組合経営研究所訳 出版協同組合経営研究所 P46~47

当時の社会では、低賃金や失業のみならず、不正な価格や悪質な品質のもと、商品が販売されることもありました。

それに対抗して、適正な価格で消費者に食料品や日用品を届けるお店をつくりました。

当初は小麦粉、バター、砂糖、オートミールのみを取り扱っておりましたが、やがて食料品、衣料、食肉、製靴、木靴、仕立物、卸売の七部門へと発展していきます。

その他、出資者には年4回の配当金が出ることや、掛け売りをせずに現金主義を行うこと、出資金額を問わず1人1票のルールなど、ロッチデールの仕組みは当時周囲に大きな影響を与えておりました。

ICA協働組合原則

イギリスからはじまった協同組合はその後ヨーロッパ、世界中へと広がっていきます。

1895年にはICA(国際協同組合同盟)が設立されます。100周年記念大会では、「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」が採択され、協同組合原則が掲げられました。

この原則にはロッチデールの運営原則が基になっており、28人が出資してお店を開いた小さな取り組みが世界規模へと広がり、現代へと繋がっております。

以下ICA原則について紹介します。

参照:日本生活協同組合連合会COOP~協同組合とは(2023年7月8日確認)

第1原則

自発的で開かれた組合員制

協同組合は、自発的な組織である。協同組合は、性別による、あるいは社会的・人種的・政治的・宗教的な差別を行わない。

協同組合は、そのサービスを利用することができ、組合員としての責任を受け入れる意志のある全ての人びとに対して開かれている。

第2原則

組合員による民主的管理

協同組合は、その組合員により管理される民主的な組織である。組合員はその政策決定、意思決定に積極的に参加する。選出された代表として活動する男女は、組合員に責任を負う。

単位協同組合では、組合員は(一人一票という)平等の議決権をもっている。他の段階の協同組合も、民主的方法によって組織される。

第3原則

組合員の経済的参加

組合員は、協同組合の資本に公平に拠出し、それを民主的に管理する。その資本の少なくとも一部は通常協同組合の共同の財産とする。

組合員は、組合員として払い込んだ出資金に対して、配当がある場合でも通常制限された率で受け取る。組合員は剰余金を次の目的の何れか、または全てのために配分する。

・準備金を積み立てることにより、協同組合の発展のため、その準備金の少なくとも一部は分割不可能なものとする。

・協同組合の利用高に応じた組合員への還元のため。

・組合員の承認により他の活動を支援するため。

第4原則

自治と自立

協同組合は、組合員が管理する自治的な自助組織である。協同組合は、政府を含む他の組織と取り決めを行ったり、外部から資本を調達する際には、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自主性を保持する条件において行う。

第5原則

教育、訓練および広報

協同組合は、組合員、選出された代表、マネジャー、職員がその発展に効果的に貢献できるように、教育訓練を実施する。

協同組合は、一般の人びと、特に若い人びとやオピニオンリーダーに、協同組合運動の特質と利点について知らせる。

第6原則

協同組合間協同

協同組合は、ローカル、ナショナル、リージョナル、インターナショナルな組織を通じて協同することにより、組合員に最も効果的にサービスを提供し、協同組合運動を強化する。

第7原則

コミュニティへの関与

協同組合は、組合員によって承認された政策を通じてコミュニティの持続可能な発展のために活動する。

このようにロッチデールの原則は、ICA声明として現代にも受け継がれております。

ICA公式ページ

国際協同組合(ICA)公式ページーhttps://www.ica.coop/en

現代は翻訳機能が充実したため、ICAの公式ページも日本語で閲覧することができます。

もしご興味のある方は一度ご覧になってみてください。

最後に

ロッチデールのキーワード

背景:イギリスの産業革命の裏では、労働者は貧困や失業など生活に苦しんでいた。

・資金集め:週2ペンス積み立て続け、1年がかりで1人1ポンドを集め、お店を開いた。

・ロッチデールの原則:当時の運営規則や精神は世界中に広がっていく。ICA声明へ。

・ジョージ・ヤコブ・ホリヨーク:ロッチデールや協同組合運動を擁護し、執筆活動を通じて世界中に広げた。政治活動家。

・協同組合の先駆者:小さなお店からはじまった取り組みは、現代の協同組合(生協)として世界中へと広がった。

このようにロッチデールの取り組みは歴史を超えて現代へと繋がっております。

そこにはジョージ・ヤコブ・ホリヨークの存在がありました。執筆を通じて、世界中にロッチデールの取り組みを紹介したのです。

日本でも「賀川豊彦(生協の父)」によって明治時代に導入されていきます。

賀川豊彦はノーベル平和賞候補者にもなっており、重要な人物であるので、また別の機会にご紹介を予定しております。

※当HPにある「youtube学校」にも賀川豊彦の動画をリンク掲載しております。

Youtube学校 - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)

協同組合の定義

協同組合は、協同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人びとの自治的な組織である。

ICA声明定義より~日本生協連訳

協同組合の価値

協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、として連帯の価値を基礎とする。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする。

ICA声明定義より~日本生協連訳

このように私たちの身近なところにも社会福祉の源流は存在しております。

28人が出資金を集めて小さなお店をはじめた社会運動という奇蹟は、現代社会を生きるヒントを教えてくれるのではないでしょうか。

最後に結びとしてこの言葉を紹介します。

わがロッチデールの協同組合が成熟した道徳的奇蹟とは、意見を異にするも調和を失わず、互いに異を唱えるも分離せず、ときに憎しみ合うもつねに団結を守り抜く良心を持ち得たことである。

ロッチデールの先駆者たち ジョージ・ヤコブ・ホリヨーク著 財団法人協働組合経営研究所訳 出版協同組合経営研究所P68

目的のために組織化して展開するときに、うまくいかないことが当然起こってきます。

その時に、是非この言葉を思い出してみてはいかがでしょうか?

ここまでご覧いただきありがとうございました。

また次回もどうぞよろしくお願いします。

参考文献/URL

・ロッチデールの先駆者たち ジョージ・ヤコブ・ホリヨーク著 財団法人協働組合経営研究所訳 出版協同組合経営研究所

・社会福祉のあゆみー社会福祉思想の軌跡 金子光一著 有斐閣アルマ 第1部初期の貧困者対策、第4章民間福祉部門の役割

・協同組合の歴史 | 日本生活協同組合連合会 (jccu.coop)(9月13日)

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