はじめに
本記事は、ギルバート法とスピーナムランド制度の成立や特徴について、要点やキーワードをまとめていきます。
以下簡単なご紹介になります。
どんな人を対象とした記事?
・ギルバート法やスピーナムランド制度について学びたい人。
・将来社会福祉に関わる仕事に就きたい人。
・社会福祉について学び自身を成長させたい人。
この記事を読むとどうなる?
・社会福祉についての知識が増える。
・物事の視点や価値観が変わる。
・思わず誰かに伝えたくなる。
「社会福祉は一重にものの見方にあり」
歴史や源流を通じて、価値観や視点を広げていきましょう。
ギルバート法とスピーナムランド制度”以前”について
まず前回までの振り返りとなります。
近代社会福祉制度のはじまりと言われるエリザベス救貧法について触れました。
エリザベス救貧法のキーワード
・時代:1601年のイギリス
・背景:エンクロージャー(囲い込み運動)
・労働能力による分類
ア)労働能力のない者:貧民院による保護
イ)労働能力のある者:労働(ワークハウス)
ウ)貧民児童:徒弟に出す(職業親方のもとで労働する)
・救貧税の徴収:教区ごと(まだ全国一律ではない)
※まだご覧になられていない方に向けてリンクを掲載いたします。
エリザベス救貧法の成立や特徴について~社会福祉の発展過程を学ぶ - (socialconnection-wellbeing.com)
エリザベス救貧法は【非人道的】となっていきます。
その理由の一つとして「労役場(ワークハウス)」と呼ばれる、いわゆる貧民が働かされる施設がありました。
このワークハウスは恐怖の家として機能し、また救貧を行う行政側にとってとても都合のよいものでした。
ワークハウスの収容されるという恐怖は救済申請の抑止として働き、また院外救済よりもはるかに安上がりであったこともあり、行政側にとって都合の良いものだったそうです。
こうして救貧法は「非人道的」となっていきます。
そこで、この救貧法の不十分な救済機能を批判してできた法や制度が「ギルバート法」や「スピーナムランド制度」となっていくのです。
ギルバート法とスピーナムランド制度の”キーワード”
ギルバート法とスピーナムランド制度について以下簡単なキーワードになります。
ギルバート法とスピーナムランド制度
〇ギルバート法「貧困者のよりよい救済と雇用に関する法律(1782年)」
・非人道的から人道的へ、人間愛を基本とした福祉の実現を目指す考え方も形成。
・”院外”救済による貧民救済
※現行の救貧法の問題点を指摘
〇スピーナムランド制度「最低生活基準に基づいた貧困者への支給制度」
・パンの価格と家族数におうじて算定した(Bread scale)貧困者への支給制度
・財源は救貧税より支給
このように、エリザベス救貧法の改善を試みたのがギルバート法とスピーナムランド制度になります。
院外救済や支給制度というものが社会福祉の中で芽生えていきます。
社会福祉士国家試験~設問より
社会福祉士国家試験の設問を通じて理解を深めていきましょう。
第31回 問題24
労役場テスト法(1722年)は、労役場以外で貧民救済を行うことを目的とした。
ギルバート法(1782年)は、労役場内での救済に限定することを定めた。
それぞれの設問について内容が適しているかどうかを考えてみてください。
※解答は記事後半に置いております。
勉強する際に気を付けること
国家試験では年号を知らないと解けない問題は出てこないのでくれぐれも注意!
ギルバート法について
1782年にギルバート法(貧困者のよりよい救済と雇用に関する法律)が制定されました。
※トーマス・ギルバート議員が提出したことで通称ギルバート法と呼ばれております。
救貧法の救済機能に批判的な立場で出された法律は、当時の時代において革新的内容を含むものでした。
ギルバート法
・貧民監督官の貧民救済が改善されたとは言えない、傲慢な業務や教区中心主義の打破を目的とした行政の合理化を提唱。
・ワークハウスをはじめとした非人道的な救貧法の在り方に対して、「労働可能な者は就労の有無で区別」、「低賃金の者には救貧税による補助」、「職のないものには雇用の斡旋」という考え方の芽生え。
このように「院外救済による貧困救済」を試みたことがギルバート法の特徴と言えます。
賃金補助や職の斡旋などは現代にも通ずるものがあります。
この中の賃金補助について実施された制度が次に紹介するスピーナムランド制度になります。
※ただ当時このギルバート法連合に加入された教区は15分の1程度であったようです。
スピーナムランド制度について
1975年イングランド南部のスピーナムランドのペリカン館での判事総会で、「院外救済による賃金補助制度(スピーナムランド制度)」が決定され実施されました。
スピーナムランド制度
・算定基準:パンの価格と家族数に応じて算定。
・対象:職のない者、低所得労働者。
・財源:救貧税より支給。
しかし、この制度にも課題が生まれてきます。
スピーナムランド制度~課題
・雇用者の低所得を合理化 → 労働者の意欲減退
・特権階級の利益(地主など)を守るもの → 貧民に最低生活を保障するようにみせかけて
※白い奴隷などと呼ばれ、地主や資本家が利潤を公正配分せず、貧民は厳しい生活を余儀なくされることもあったとのことです。
そして、やがて農業労働者による暴動から、救貧法の改正への気運が生まれ、新救貧法へと続いていきます。
社会福祉士国家試験~設問解答
ここまでを踏まえて、再度設問を通じて知識を確認していきましょう。
第31回 問題24
労役場テスト法(1722年)は、労役場以外で貧民救済を行うことを目的とした。
ギルバート法(1782年)は、労役場内での救済に限定することを定めた。
ポイントは院内救済と院外救済になります。
院内救済を重視
・エリザベス救貧法
・ワークハウステスト法
・非人道的
院外救済を重視
・ギルバート法
・スピーナムランド制度
・人道的
すると選択は両方とも間違っていることになります。(用語と内容が入れ替え関係)
このように、「院内救済」と「院外救済」のように対となるものは問題になりやすいので、全部の科目においても注視してみるとよいかもしれません。
まとめ
ギルバート法とスピーナムランド制度
〇ギルバート法「貧困者のよりよい救済と雇用に関する法律(1782年)」
・非人道的から人道的へ、人間愛を基本とした福祉の実現を目指す考え方も形成。
・”院外”救済による貧民救済
※現行の救貧法の問題点を指摘
〇スピーナムランド制度「最低生活基準に基づいた貧困者への支給制度」
・パンの価格と家族数におうじて算定した(Bread scale)貧困者への支給制度
・財源は救貧税より支給。
いかがだったでしょうか。
このようにエリザベス救貧法~ワークハウステスト法への批判として、ギルバート法とスピーナムランド制度が生まれていきます。
これらはどこか人間の本質を表しているかのような読み方もできます。
・労働 → 奴隷 (貧困者や囚人、生きづらさを抱えた人々など)
・管理 → 費用の面、統一した行政運営による利便性
・恐怖 → 申請や救済をあきらめる
・不正 → 権力の乱用
今後とも社会福祉の源流をたどっていく中で、皆さんの視点がどんどん変わっていくと思います。
引き続きどうぞよろしくお願いします。
ミッション
社会福祉の歴史や源流を通じて、人々の視点を変えていくこと。
☆この記事を書くにあたって参考にした文献
社会福祉のあゆみ 社会福祉思想の軌跡 金子光一著 有斐閣アルマ 第3章新救貧法の成立 1救貧法の「人道主義化」ギルバート法とスピーナムランド制度 P34~37