はじめに
本記事ではソーシャルワーカーや対人援助職でよく出てくる「自己覚知」をテーマに記事をまとめていきます。
きっと「自己覚知」という「ある意味特殊な言葉」を最初に聞いたとき、頭の中が「?」になる方も多いのではないでしょうか?
本記事ではそんな方のモヤモヤを解消して、皆さんの向上心を少し後押しできればと考えております。
それでは以下ご覧ください。
自己覚知の由来は?
「自己覚知とは?」というテーマを考えるにあたって大事なことは、「自己覚知という言葉はどのようにして誕生したか?」ということをまず最初に知ることになります。
自己覚知が誕生した経緯は一言でいえば、「海外の本を日本語に翻訳した際に自己覚知という表現を使った」ことがはじまりです。
ソーシャルワーク発展史においては、ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークがそれぞれ別に発展しやがて統合される歴史があります。自己覚知は統合される前のケースワーク時代において、「self-awareness」を翻訳された際に日本に導入された言葉のようです。
自己覚知のはじまり
海外の文献を日本語に翻訳する際に「self-awareness」を「自己覚知」と表現したことがはじまり。
このようにある事柄について考えるときには、「はじまり」や「原点」を知ることでより学びが深くなります。
+α海外から日本へ
ソーシャルワークの一つのテーマでもある「社会構造」について考える際にも、「言説」や「言語表記」といったものは重要な要素となってきます。
福祉の世界でも、「痴呆」→「認知症」、「精神薄弱者」→「知的障害者」といったように日本語(とりわけ漢字)には意味や要素が多く含まれているため、表記を変えるだけでも意味や人々の認識は大きく変わります。
これは海外から日本に導入される際も同様で、「英語が日本語に翻訳される過程で本来の意味とは少し違ったものになる」ことがあります。
例)野球 →(野に球と書いて野球) ≒ BaseBall(ベースボール)
ベースボールが日本に導入された際には「野球」という表記で日本に導入されました。
日本では野球はその漢字の通り、河原や公園といった場所での遊びとしても日本中に広まりました。
現代は河原や公園で野球をする人は少なくなり、むしろベースボールとして競技化が強化されましたが、
このように【ベースボールが日本に導入される際に「野球」として少し変化して日本に入ってきた】ことが例として挙げられます。
今回の「self-awareness」も日本に導入される際に「自己覚知」としてケースワークの世界で導入され日本でテーマ化され発展していきます。
自己覚知と自己認知|self-awareness
「self-awareness」からはじまった自己覚知ですが、「自己覚知」→「self-awareness」→「自己認知」or「自己覚知」といったように、self-awarenessは自己覚知だけが意味ではありません。「自己認知」としても翻訳できます。
とりわけ専門化すればするほど「神聖化」されがちでありますが、心理職の方はむしろ「自己認知」として使われている部分もあります。
こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、「自己覚知」という言葉は要は「self-awareness」で、自己覚知でも自己認知でも「自分について知る」という大元は共通していると言えます。
自己覚知と自己認知
「self-awareness」はケースワークでは「自己覚知」として広まっているが、心理職や一般的には「自己認知」として翻訳される。
※自己覚知について考える上でヒントやきっかけを知りたい場合は「自己認知」でも検索することをオススメします。
自分を知るとは?
自己覚知や自己認知を対人援助職向けに表すと「援助や支援を行う自分についての内観や内省を行う中で、自分の感情の動きや思考回路を知ること」になります。
自己覚知(≒自己認知)
・対象:自分(とりわけ援助や支援を行うときの自分)
・プロセス:自身について内観や内省を行う
・結果:自身の感情の動きや思考回路について知る
ここで注意しなければいけないことは、まず第一に「自己覚知をすることは難しいことである」ということ、そしてもう一つは「自己覚知のときに考えを巡らすのは【対人援助を行っている自分】であり、それは自分という人間のすべてではなく一部であること」です。
また自己覚知を行う中で、振り返りや自己批判といったステップを踏むことはありますが、最終的に「自己否定」に陥っては本末転倒です。
内観や内省においては一人で考える時間はもちろん重要でありますが、他者からのフィードバックを受けることによって自分の知らない部分や避けている側面を知る手がかりを得ることもできますので、ぜひ周囲の人の力も巻き込んで有効活用してみましょう。
ダニングクルーガー効果
能力や専門性、経験の低い人が、一部の知識や経験を持ったことにより自分の能力を過大評価する認知バイアス
ダニングクルーガー効果では【縦軸に自信】、【横軸に知識経験】を置いて、以下の4つの段階があります。
①馬鹿の山
・少しの知識や経験を得て自信を持っている
②絶望の谷
・知識の深さを知って自信を失っている
③啓蒙の坂
・成長を感じて自信を持ち始める
④継続の大地
・適切な自己評価ができ、自信を持ち始める
このように、自信を持つ段階や自信を失う段階を経て、人は成長していくのです。
インポスター症候群
自分の能力や実績があるにもかかわらず、自分を卑下し必要以上に過小評価してしまうこと
・順風満帆でも、「運が良かっただけ」、「周りに恵まれていただけ」と思い込む
・積極的な挑戦を避ける傾向
・他人と比較して卑下してしまう
・成功することに通常より不安を感じる
・女性、とりわけ高度専門職の女性に多い傾向
・うつ病や適応障害を引き起こす要因にもなる
特にSNS時代において、スマホを開くと必要以上に色んな人の情報が入ってきて、自分と周囲を比較してしまい自分を責めてしまうこともあります。
そんなときは遠慮せずに投稿が表示されないように調整をするなど、SNSとの距離感を適切に図ることも自分を守るためにも大切になります。
このように知識を広げることは価値観や見聞を広げることにもつながります。
以下いくつか代表的なものをご紹介します。
バイスティックの7原則
バイスティックの7原則は面接技術のみならず、保育や介護、医療、福祉のそれぞれの分野を学ぶ過程で広く取り扱われております。
7原則だけをみると、「個別化」「意図的な感情表出」「統制された情緒的関与」「需要」「非審判的態度」「自己決定」「秘密保持」が挙げられますが、本当に大切なことは「援助関係の本質」になります。
医者や弁護士はクライエントとの良好な関係がなくても、治療や訴訟で成果をあげることができますが、ケースワーカーの場合は良好な人間関係があることが必須となることを述べております。
バイスティックの7原則まとめ|援助関係の本質を探る【医療・介護・福祉・保育従事者向け】 - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)
こちらの記事に7つの原則のその一歩先をテーマに大切なことをまとめておりますので、良かったらご覧になってみてください。
防衛機制
防衛機制とは、「不安や危機といったストレスに対して、無意識に働く心の防衛反応」のことを言います。
具体例としては「抑圧」「合理化」「置き換え」「昇華」など、聞き覚えのある人も多いのではないのでしょうか?
私たちは実は日常生活や職業生活において、無意識に防衛機制を使っており、その人が表出しやすい防衛機制のクセがあるということがあります。
こちらも記事をまとめてありますので、良かったらご覧になってみてください。
防衛機制の種類と具体例まとめ~社会福祉士国家試験から福祉実践まで - SOCIAL CONNECTION (socialconnection-wellbeing.com)
エニアグラム(エゴグラム)
エニアグラムは2000年前のアフガニスタンで誕生されたと言われ、古くから使われていた個人の性格や行動の傾向を分析し理解するためのツールやモデルになります。
エニアグラムは門外不変とも言われ、師匠から弟子へと代々伝えられてきたとのことです。(昔は紙に書き残すことや印刷技術はありませんでした。)
9つの性格
①完全でありたい人
②人の助けになりたい人
③成功を追い求める人
④特別な存在であろうとする人
⑤知識を得て観察する人
⑥安全を求め慎重に行動する人
⑦楽しさを求め計画する人
⑧強さを求め自己を主張する人
⑨調和と平和を願う人
このように9つの性格や気質があるとのことですが、大切なのは「悪い面もあれば、良い面もある」ということを知ること、そして「当てはまる要素は一つだけではなく、バランス的に特性を捉える(例1の要素もあれば、2や4の要素も当てはまる)」というように、柔軟に構えることが大切です。
また自身の特性や傾向を把握するだけでなく、組織やチームにおけるマネジメントにおいても役に立つ内容となっております。
下記の書籍がオススメになりますので、良かったらご覧になってみてください。
16パーソナリティ性格診断
他にも手軽に楽しみながらできるものとして、16パーソナリティ性格診断というものもあります。
16パーソナリティ
〇分析家
・建築家、論理学者、指揮官、討論者
〇外交官
・提唱者、仲介者、主人公、運動家
〇番人
・管理者、擁護者、幹部、領事
〇探検家
・巨匠、冒険家、起業家、エンターテイナー
自分のことや相手のことを知ろうとするきっかけづくりとして、楽しみながら行うことができますので、良かったお試しください。
※ただしパーソナリティは発展するものでもあり、今出ている結果が一生続くわけでもないことに留意しましょう。
価値観や尊厳を磨き成長するプロセス
~まとめ
以上が「自己覚知(self-awareness)について考える」をテーマした記事になります。
私自身、社会福祉の道を進み続ける理由として、「一人の人の存在」や「贖罪」、「天命のようなもの」として今は捉えております。
また個人的な自己覚知の定義として「自分の中に秘めた原石を磨くこと(磨き続けること)」という姿勢が第一にあり、「プロセスはその人それぞれ」で多種多様なものだと感じております。
きっと誰しもが「原石」というものを自分の中に持っているはずです。ただ磨き続けないで放置するとホコリがたまってしまいます。
成長すればするほど、できることや出逢いも増えます。
ライフパーパスでは、「人生の大半を占める仕事が豊かであることは人生の豊かさにも直結する」という考え方もあります。
自分ひとりで抱え込まないことも大切に、それぞれのペースで小さな一歩を積み重ねていきましょう。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。