はじめに
本記事は、共有地の悲劇とは何か?という入口から、環境の視点や社会システムについて視野を広げていく内容となっております。
近年は「グリーンソーシャルワーク」という言葉があるように、私たちソーシャルワーカーも環境(動植物との共存、大気や水などの環境汚染)といったマクロな視点まで対象を広げていくことが重要とされております。
その中で、本日は社会理論と社会システムにも出てきた「共有地の悲劇」について、簡単に確認していきます。
それでは以下ご覧ください。
共有地の悲劇とは
共有地の悲劇は、環境倫理学者のギャレット・ハーディンによって提唱された概念となります。
村の共有地で人々は羊を飼っていたが、やがて個人の利益を求めるがゆえに羊の数を増やした結果、牧草がなくなり、村全体にとって不利益が生じることとなった牧草地の話が例とされております。
現代においても、森林伐採や、二酸化炭素、クロマグロ漁獲量など、個人個人が利益追求を求める結果、資源が過剰に消耗され、持続不可能な状態になることがあります。
そのため、資源管理の適切な規制を設定することや、持続可能に向けた啓発や勧告といった理解を広げることを行っております。
共有地の悲劇
共有された資源(例:牧草地や森林、漁場など)が、個人の利益追求によって過剰に消耗され、結果全体として持続不可能な状態に陥ること。
しかしそれでも、人間の競争原理や利益追求というものは必ず伴います。
近年「SDGs」が掲げられ、それに向けて世界が一つに向かうかと思われたところ、パンデミックによるワクチン競争、はたまた戦争が起きました。
人間は「more」、もっとを求めます。
経済学者のトマス・ピケティも「ビリオネアは雇用を生まない」ことを断言されております。
地球という星が、これからも住み続けられるよう経済・社会・環境のバランスを保つためには、経済のみならず、環境や社会側の立場にいる人たちもその活動や課題を広く人々に伝えることが重要なのかもしれません。
社会福祉士国家試験
社会福祉士国家試験~設問より
第30回問題20
次の記述のうち、「共有地の悲劇」に関する説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公共財の供給に貢献せずに、それを利用するだけの成員が生まれる状況を指す。
2 協力してお互いに利益を得るか、相手を裏切って自分だけの利益を収めるか、選択しなければならない状況を指す。
3 他の成員の満足度を引き下げない限り、ある個人の満足度を引き上げることができない状況を指す。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果、全体としては不利益な状況を招いてしまうことを指す。
5 社会全体の幸福が、諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計と一致する状況を指す。
このように社会福祉士の国家試験でも「共有地の悲劇」が出題されております。
社会理論と社会システムは難しい科目であるかもしれませんが、マクロな視点を養うためにも必要な科目です。
社会福祉士国家試験~設問解答
解答
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で、自己利益を追求した結果、全体としては不利益な状態を招いてしまうことを指す。
こちらが「共有地の悲劇」についての説明となり、正しい内容となっております。
まとめ
共有地の悲劇
共有された資源(例:牧草地や森林、漁場など)が、個人の利益追求によって過剰に消耗され、結果全体として持続不可能な状態に陥ること。
社会福祉は、ミクロ・メゾ・マクロといった広い視野をもって実践を行います。
グローバル定義にも「複数の学問分野をまたぎ、その境界を超えていくもの」と明記されております。
このように社会福祉のネットワークは、経済・社会・環境といった幅広い人たちと人脈をつくりながら、その人たちから色々な知識や視点を教えてもらうことが重要だと個人的に感じております。
野球で150キロ投げることが、今や当たり前となっているように、社会福祉の世界でも時代と共に人財がアップデートされ続けることを強く願っております。
引き続きどうぞよろしくお願いします。